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2016 年度 実施状況報告書

モデル生物を用いた減数分裂期におけるTORC1の活性化と生理機能の分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26440053
研究機関神戸大学

研究代表者

中嶋 昭雄  神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (70397818)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードTORC1 / 減数分裂 / シグナル伝達 / モデル生物
研究実績の概要

目的:TORC1キナーゼは生育環境中の栄養シグナルを受け、タンパク合成や細胞の主要な生理機能を制御する重要な分子である。本研究では、モデル生物である分裂酵母(S. pombe)の減数分裂過程におけるTORC1の活性制御メカニズムおよび生理機能を明らかにし、生殖細胞におけるTORC1の分子機能モデルの構築を目指す。
研究代表者は、減数分裂時にTORC1が細胞外栄養環境非依存的に強く活性化されることを明らかにしている。また、その減数分裂特異的なTORC1活性制御について、減数分裂の各プロセスで進行が停止する遺伝子変異株を用いて、TORC1活性化の起点となるプロセスと活性化に必須なRNA結合タンパクを同定し、さらに、別の分子(プロテインキナーゼ)が減数分裂特異的TORC1の活性化に部分的関与することを突き止めた。このプロテインキナーゼは減数分裂のいくつかのフェーズの進行に関わることが知られているが、減数分裂初期における機能がTORC1の制御に関わることが示唆された。ただ、今回明らかとなった減数分裂の機能分子とTORC1との相互作用は、直接的なものか、別の分子を介した間接的なものかはさらに詳細な解析が必要である。また、減数分裂時にTORC1の機能を特異的に阻害すると、減数分裂前DNA複製の開始の遅延が示され、減数分裂進行に関わるいくつかの分子の発現異常が認められた。この結果は、TORC1が減数分裂に必要な分子群の発現を制御することで減数分裂進行に関わることを示唆している。このTORC1の性質はこれまでにどの生物種においても報告されていない。また、TORC1は通常、体細胞分裂期には主に液胞膜上に局在するが、減数分裂進行時では体細胞分裂期とは異なる特徴的な局在を示しており、その生理的な意義の解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度も減数分裂でのTORC1活性制御機構について解析を進め、重要な働きをする分子を同定した。減数分裂時のTORC1の役割として減数分裂前DNA複製開始への関与およびDNA複製に関わる分子の発現制御への関与が明らかとなり、減数分裂特異的なTORC1活性制御の分子メカニズムの解明が進んだ。これらの結果を受け、関連分子とTORC1とのより直接的な相互作用の検証へと進むことが可能となった。また、この減数分裂特異的なTORC1の制御機構は、オートーファジーによる栄養素のリサイクルの影響を受けるが、栄養依存的な制御に付加的に作用している可能性が高く、全く知られていない制御メカニズムを提示できるかもしれない。さらに減数分裂期のTORC1の細胞内局在は、特徴的な局在化を示す結果が得られており、TORC1が減数分裂前DNA複製開始制御以外の減数分裂のイベントへの関与の可能性を示し、新たな展開が期待できる。

今後の研究の推進方策

本年度の成果を受け、次年度は以下の点を中心に取り組む。
本研究で同定されたTORC1の活性化に関わる減数分裂関連分子とTORC1複合体構成分子およびTORC1シグナリング構成分子との詳細な相互作用を調べる。減数分裂期の遺伝子発現制御へのTORC1の関与についてDNAマイクロアレイ解析または次世代シークエンサーによるRNAseq解析により検証する。影響のあった遺伝子からそれらの発現を制御する転写因子を推測し、TORC1との相互作用およびTORC1による転写因子の機能制御について検証する。TORC1の減数分裂特有の細胞内局在化について、同様の局在化が観察される他のタンパク質群とTORC1およびTORC1シグナリング構成分子との相互作用を検証し、その特有な局在の生理的な役割を探る。また、TORC1の減数分裂における生理機能について、TORC1活性を阻害し、減数分裂の各プロセスへの影響を細胞生物学的に解析し、特に栄養飢餓で誘導されたオートファジーが減数分裂移行期にどのように制御されるかについて引き続き検証する。

次年度使用額が生じた理由

予定の研究期間の間、減数分裂におけるTORC1の活性制御メカニズム及びその生理機能について同時進行で解析を行ってきた。一方で、本年度は他の研究予算からの措置および消耗品および購入機器の種類・価格変更により当初の予定より小額で済んだ。また、本研究成果の一部を平成28年度中に国際雑誌に発表する予定であったが、研究を精緻に達成するためには分子レベルでのより詳細な解析を行う必要性を感じ、その準備実験等で時間が必要であったことから平成29年度に行うこととなったため。

次年度使用額の使用計画

次年度は、TORC1による減数分裂期の遺伝子発現制御の検討のため次世代シークエンサーなどによる解析を引き続き行う予定であり、さらにTORC1構成因子の翻訳後修飾および他の制御因子との相互作用など分子レベルの解析を行うための経費を見込んでいる。また、当初の計画通り、実験試薬・消耗品の購入、学会等における研究成果発表のための旅費等への使用を予定している。
次年度は、研究成果の学術論文としての発表を予定しており、英文校正費および学術雑誌への掲載費、また追加実験の実施などの必要経費を見込む。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] The Loss of Lam2 and Npr2-Npr3 Diminishes the Vacuolar Localization of Gtr1-Gtr2 and Disinhibits TORC1 Activity in Fission Yeast.2016

    • 著者名/発表者名
      Ma N, Ma Y, Nakashima A, Kikkawa U, Furuyashiki T.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 11 ページ: e0156239

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0156239

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Overexpression of eIF5 or its protein mimic 5MP perturbs eIF2 function and induces ATF4 translation through delayed re-initiation.2016

    • 著者名/発表者名
      Kozel C, Thompson B, Hustak S, Moore C, Nakashima A, Singh CR, Reid M, Cox C, Papadopoulos E, Luna RE, Anderson A, Tagami H, Hiraishi H, Slone EA, Yoshino KI, Asano M, Gillaspie S, Nietfeld J, Perchellet JP, Rothenburg S, Masai H, Wagner G, Beeser A, Kikkawa U, Fleming SD, Asano K.
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Res.

      巻: 44 ページ: 8704-8713

    • DOI

      10.1093/nar/gkw559

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Identification of cellular senescence-specific genes by comparative transcriptomics.2016

    • 著者名/発表者名
      Nagano T, Nakano M, Nakashima A, Onishi K, Yamao S, Enari M, Kikkawa U, Kamada S.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 6 ページ: 31758

    • DOI

      10.1038/srep31758

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] フェロモン応答シグナルによる分裂酵母TORC1 制御の可能性2016

    • 著者名/発表者名
      中嶋昭雄,吉川 潮
    • 学会等名
      第6回TOR研究会
    • 発表場所
      東京大学分子細胞生物学研究所 (東京都・文京区)
    • 年月日
      2016-09-30 – 2016-10-01
  • [備考] バイオシグナル総合研究センター 細胞情報研究分野

    • URL

      http://www.research.kobe-u.ac.jp/brce-kikkawa/

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公開日: 2018-01-16  

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