研究課題/領域番号 |
26440057
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢尾板 芳郎 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00166472)
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研究分担者 |
田澤 一朗 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10304388)
中島 圭介 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60260311)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ネッタイツメガエル / TALEN / 変態 / ゲノム編集 / 甲状腺ホルモン受容体 / 細胞外基質分解酵素 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、一連の変態関連遺伝子を標的としたTALENによる標的遺伝子破壊を行ったネッタイツメガエルの表現型の解析により変態関連遺伝子の機能を明らかにすることである。 変態関連遺伝子として、甲状腺ホルモン受容体α (TRα)、甲状腺ホルモン受容体β (TRβ)、甲状腺ホルモン活性化酵素 (D2)、甲状腺ホルモン不活性化酵素 (D3)、細胞外基質分解酵素であるstromelysin3 (STL3)とMMP9TH、細胞死関連酵素であるcasp3、T細胞の分化に必要な遺伝子であるFoxn1、尾の退縮時に幼生抗原として働くと考えられているouro1とouro2を選び、F0の交配の結果、現在、各標的遺伝子が両染色体上で破壊されたF1が順次、得られている。 解析の進んでいるのはouro1とouro2のF1ノックアウトガエル(F1KO)である。ouro1F1KOでは、当然、Ouro1タンパク質は検出限界以下になっていた。更にOuro1タンパク質とヘテロダイマーを形成するOuro2タンパク質も正常な構造を保てなくなったと思われ、かろうじて検出できる程まですこぶる減少していた。ouro2F1KOでも同様に、Ouro2は発現しておらず、Ouro1の発現量も激減していた。F1KO幼生ではOuroタンパク質が検出限界、もしくは、それ以下でありながら、尾は正常に退縮しており、尾が変態後に残ることも無かった。また、Foxn1のF1KOでは胸腺が形成されておらず、CD8陽性T細胞も脾臓から消えており、皮膚移植片拒絶反応も低下していた。それにも関わらず、F1KO幼生の尾も正常に縮んでおり、尾が残存することもなかった。これらの知見はOuroタンパク質がツメガエル幼生の変態期における尾の退縮に必要ないことを証明しており、従来の尾の退縮の免疫学的拒絶反応説が間違えていることが明確に示された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度以降の計画では、1)TALEN mRNAを注入したカエルF0同士の交配、2)標的遺伝子変異ホモを得るためのF1個体のスクリーニング、3)得られたF1ノックアウトガエルの解析となっている。 F0の交配によって得られたF1の遺伝子解析のスクリーニングを経て、標的遺伝子変異のホモのF1ノックアウトガエル(F1KO)が得られているのは、甲状腺ホルモン受容体α (TRα)、甲状腺ホルモン受容体β (TRβ)、甲状腺ホルモン不活性化酵素 (D3)、細胞外基質分解酵素MMP9TH、細胞死関連酵素であるcasp3、T細胞の分化に必要な遺伝子であるFoxn1、尾の退縮時に幼生抗原として働くと考えられているouro1とouro2である。Foxn1とouro1とouro2のF1KOの解析は既に終わり、論文として発表した。MMP9THのF1KOは完全にゼラチン分解酵素活性を失って、変態中の尾で活性が上がらなかったにも関わらず、尾の退縮は正常であった。因にMMP9TH mRNAは退縮中の尾で抜きん出て高く増加し、300倍以上誘導されている。TRα、TRβ、D3、casp3のF1KOでは遺伝子特異的な表現型を観察した。表現型を確定するためには、より多くの幼生の解析を行なう必要がある。D2とSTL3では標的遺伝子変異がヘテロの幼生しか、得られていないので、解析が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、予定通り、1)TALEN mRNAを注入したカエルF0同士の交配、2)標的遺伝子変異のホモを得るためのF1個体のスクリーニング、3)得られたF1ノックアウトガエルの解析と実験を続ける。 標的遺伝子に相応する遺伝子のノックアウトマウスで報告されている表現型と比較することにより、この両生類の変態が哺乳類の出生に対応するかを検討することを、当初、考えていた。しかし、解析が進むにつれて、幼生のF1KOとノックアウトマウスの表現型がきれいに対応していないことが明白となった。そのため、変態前後での野生型幼生の臓器におけるRNAseqを行い、増減している遺伝子の機能をまとめ、それとマウスとヒトの出生前後における機能の変化と比較し、共通する臓器の機能変化を推測する。その機能変化を引き起こす重要な遺伝子であり、しかも、変態の前後で増減する遺伝子の発現が、標的変態関連遺伝子変異のF1KOで特異的に抑制されているか、どうかを探る。このような遺伝子が多数見つかれば、両生類の変態が哺乳類の変態に極めて類似していることが示されるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にF1のKOガエルを得たが、メインの解析が28年度にずれたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の夏から本格的な解析が始まるので、その時に使用する。
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