研究課題
増殖因子受容体はがん治療のターゲットであり、その性質を明らかにすることは重要である。本研究では、N型糖鎖によるErbB受容体の制御メカニズムを明らかにし、がん治療に応用可能な新しい糖鎖改変・可溶型ErbBの開発を行うことを目標とした。研究代表者はこれまでにEGFRのN420及びErbB3のN418に結合するN型糖鎖が二量体形成に関与していること、ErbB3の細胞外ドメイン(sErbB3)のシグナル抑制作用がN418Q変異によって増強することを見出した。今回、N型糖鎖によるsErbB3の物性制御メカニズムと、sEGFRの機能および物性制御メカニズムについて研究を進めた。まず、sErbB3の物理化学的性質を解析した。X線結晶構造解析では、野生型とN418Q変異型とで構造の差は認められなかった。示差走査熱量測定では、野生型と比較してN418Q変異型では熱安定性の低下が認められた。この結果より、N418Q変異型では構造変化を起こしやすいことが予想され、糖鎖が構造安定性に関与していることが示唆された。さらに2017年4月にゲルろ過―小角散乱によって溶液中の構造解析を行うことを計画しており、現在準備を進めている。次に、sEGFRの糖鎖による機能および物性制御メカニズムを検討した。まず試料の調製において、発現ベクターや細胞培養法、精製プログラムを検討することによって精製効率をおよそ160倍に上げることに成功した。sEGFR N420Q変異体では野生型と比較して、EGFシグナルの抑制作用が著明に増強することがわかった。現在、sErbB3と同様の物性の解析を進めている。以上の結果は北海道大学先端生命科学研究院, 姚閔先生、加藤公児先生との共同研究による。
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