研究課題/領域番号 |
26440059
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
細田 直 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (40438198)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | mRNA品質管理 / 翻訳 / エキソソーム / mRNA分解 |
研究実績の概要 |
高等生物では多様かつ膨大なRNA分子種が細胞内に発現している。高次の生命活動においてこれらを適切に作動させるためには、異常もしくは不要RNAを分解することが必須となる。このRNA品質管理機構(NGDやNSDなど)において、翻訳終結因子類似Dom34-Hbs1複合体が異常RNAを認識し、3’→5’方向エキソヌクレアーゼ(エキソソーム)複合体によりRNAを分解されることが申請者を含め複数のグループから報告されている。前年度までの解析により、外因性異常RNAの排除においては、類似のDom34-GTPBP1/2複合体が機能することを見出している。一方、ウイルスRNAにおいて選択的に分解・除去する抗ウイルス防御機構が存在することが知られているものの、その機構の詳細は不明な点が多い。本年度は1本鎖の(+)鎖RNAウイルスである脳心筋炎ウイルス(Encephalomyocarditis virus; EMCV)について解析を行った。 細胞はウイルス感染時インターフェロン(IFN)誘導カスケードを活性化させる。IFN処理したHeLa細胞において、EMCV感染後期おける細胞内EMCV RNA量はDom34ノックダウンにより上昇した。さらに、HeLa細胞にin vitro合成したEMCV RNAを導入しその分解過程について検証したところ、Dom34ノックダウンにより顕著な分解抑制が観察された。EMCV RNAにおいても外因性異常RNA、NSD、NGDと類似の機構で分解されることが示唆された。ウイルス感染時において抗ウイルスエンドヌクレアーゼRNaseLが活性化することが知られている。RNaseLノックダウンによっても顕著な分解抑制が観察された。Dom34により認識されたウイルスRNAは、RNaseLによりエンド切断を受けた後、エキソヌクレアーゼにより速やかに除去されるという分子機構が想定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに見出した外因性異常RNAを分解する機構の解析に基づき、本年度はウイルスRNAの防御機構の解明へと発展させることができた。いずれもDom34が異常RNAの認識に機能するという新たな知見を得た。さらにウイルスRNAの分解にRNaseLによるエンド切断が関与するという興味深い知見を得た。しかしながら、ノンストップmRNAなど 3’末端に露出する短鎖ポリAを引き金とする品質管理機構については、解析がやや遅れている。以上の理由により、本年度における達成度は「概ね順調にして進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルスRNAの防御機構において興味深い知見が得られたので、その分子機構の解明に焦点を当て解析を進める。ウイルスRNAを排除する分子機構においてHbs1、GTPBP1/2いずれが機能しているか明らかにする。これらをsiRNAによりノックダウンし、EMCV感染時におけるEMCV RNAの動態、および導入EMCV RNAの分解過程を解析する。Dom34、エキソソーム複合体、RNaseLの相互作用様式を詳細に解析する。まずこれら因子の各種欠失変異体を作製し、相互作用ドメインを同定する。Dom34に対するエキソソーム複合体およびRNaseLの競合関係を解析し、エンド切断からエキソヌクレアーゼによる速やかな分解へとスイッチさせる分子機序を解明する。さらに、Dom34、RNaseLと相互作用する因子を、免疫沈降法もしくはプルダウン法により単離し、質量分析法(PMFもしくはショットガン解析)により同定する。ウイルス分解過程を制御する特異的因子が同定されると期待している。
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