高等生物では多様かつ膨大なRNA分子種が細胞内に発現している。高次の生命活動においてこれらを適切に作動させるためには、異常もしくは不要RNAを分解することが必須となる。このRNA品質管理機構(NGDやNSDなど)において、翻訳終結因子類似Dom34-Hbs1複合体が異常RNAを認識し、3’→5’方向エキソヌクレアーゼ(エキソソーム)複合体によりRNAを分解することが申請者を含め複数のグループから報告されている。前年度までに、外因性異常RNAと位置づけられる、(1) RNA医薬で脚光を浴びている人工合成mRNA、(2) 1本鎖(+)鎖RNAウイルスである脳心筋炎ウイルス(Encephalomyocarditis virus; EMCV)、について解析を進めた。これら異常RNAの除去においては、類似のDom34-GTPBP1/2複合体および、抗ウイルスエンドヌクレアーゼRNaseLが機能することを明らかにしてきた。本年度は、人工合成mRNAを細胞内において安定化する技術の開発を進めた。人工合成mRNAが自然免疫システムOAS-RNaseL 経路を介して分解されることをノックダウン解析により見出した。特に、OAS3のノックダウンにより合成mRNA安定化に加え、蛋白質の発現量も劇的に増大した。そこでOAS3を標的とする阻害剤の開発を目的として、OAS3の酵素活性を測定する系を確立した。化合物ライブラリーに対しスクリーニングを行い、OAS3阻害剤作用をもつ化合物を複数同定した。この化合物を用い人工合成mRNAの発現効率を改善することで、様々な遺伝子治療への応用が可能になると期待出来る。
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