研究課題/領域番号 |
26440060
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
小西 博昭 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (40252811)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞情報伝達 / アダプタータンパク質 / 細胞増殖因子 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
1、GAREMはアミノ末端側のCABIT(cysteine-containing, all-in Themis)ドメイン、中央部に存在するプロリンリッチ領域およびカルボキシル末端側のSAM(sterile alpha motif)ドメインの主に3つの機能ドメインからなる。EGF刺激などの細胞増殖因子刺激を受けた細胞内において、GAREMはチロシンリン酸化され、それによりプロリンリッチ領域とアダプタータンパク質Grb2のSH3領域が結合し、Erk活性化を制御することを以前報告した。これまでCABITおよびSAMドメインの役割については不明であったが、両ドメインが分子内結合することを今回見出した。GAREMにはGAREM1とGAREM2の2種類の分子種が存在し、GAREM1のみがCABITドメイン内に核局在配列(NLS)を持ち、核内にも局在できる。GAREM1においてCABIT-SAMドメインの結合はCABIT内のNLSの機能を阻害することを見出した。本研究結果はBBRC, 464 (2015) 616-621に報告した。 2、GAREM1およびGAREM2それぞれのコンディショナルノックアウト(KO)マウスの作製を完了した。その後、全身でCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスと交配し、それぞれの完全KOマウスを作製した。 3、当研究室で作製した抗体を用いて、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Yで過剰発現させたNGF受容体に結合し、その神経突起伸張に関与するタンパク質の一つとしてGAREM2を同定したことを共同研究先が発表した(Sci Signal.(2015 ) 8(374):ra40.)。現在、FLAGタグを付加したGAREM2を恒常的に発現するSH-SY5Yを樹立したので、神経細胞特異的なGAREM2結合タンパク質の同定を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス個体においてユビキタスに発現するGAREM1のKOマウスについては、成長不良や少体重などが予想され、それらの点に着目しながら飼育、観察している。また、脳特異的に発現するGAREM2のKOマウスについては、行動学的異常などに着目している。
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今後の研究の推進方策 |
1、GAREM1およびGAREM2のKOマウス作製を完了し、戻し交配も今後の解析に充分な回数を行った。現在その表現型についての詳細な解析を随時行っているが、どちらのKOマウスも基本的に正常で、野生型マウスと大きな差は見られない。しかし、GAREM1KOマウスでは若干の発育不良、GAREM2KOマウスでは過敏反応が見受けられる。これらについて、再現性や定量性が確認できるか解析している。また、成長や行動の異常について、飼料や環境を変化することによりGAREMの有無による個体レベルでの違いを明らかにしていく予定である。今後、両GAREMを欠失させたダブルKOマウスの作製も進めており、併せて解析する。さらに、胚性線維芽細胞(MEF)を樹立し、細胞増殖因子刺激応答などについてGAREMをKOした影響も解析する。 2、培養細胞を用いたGAREMの機能解析について、GAREM中のCABIT-SAMドメイン同士の結合がチロシンリン酸化などの翻訳後修飾により、どのような影響を受けるかについて解析を行う。これまでの解析によりカルボキシル末端側のSAMドメインはGAREMのErk活性化制御能に影響することを見出している。この制御機構にはGAREMのチロシンリン酸化が必須であるが、GAREM機能、CABIT-SAM領域の相互作用およびチロシンリン酸化の関連を明らかにしたい。また、その際の細胞内局在変化についても解析する。 3、これまでにSH-SY5Y細胞のIGF刺激による神経様突起伸張にGAREM2が関与することを報告している。しかし、そのメカニズム、特にGAREM2特異的結合タンパク質は不明である。そこで、レトロウイルス発現系を用いてFLAGタグを付加したGAREM2を恒常的に発現する細胞を樹立した。今後、IGF刺激前後の細胞から、アフィニティー精製後のGAREM2に結合するタンパク質の同定を行う。
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