研究課題/領域番号 |
26440061
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
稲森 啓一郎 東北薬科大学, 薬学部, 准教授 (70710375)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スフィンゴ糖脂質 / ガングリオシド / GM3 / 視床下部 / レプチン / メラノコルチン受容体 |
研究実績の概要 |
高脂肪食摂取などのストレスは、視床下部での炎症とそれに伴うレプチン抵抗性を惹起し、摂食・代謝調節機能に異常をきたすことで肥満・インスリン抵抗性などの病態へと導く。本研究では、(1)視床下部におけるガングリオシド分子種の炎症性メディエーターとしての役割の検証,(2)炎症および摂食・代謝性の受容体シグナルにおけるガングリオシドの生理的機能の解析を行い、視床下部のエネルギー恒常性維持機能における糖脂質ガングリオシドの生理的役割を明らかすることを目的としている。 (1)について、前年度から検討していたLC-MS/MSによるマウス視床下部の各ガングリオシド分子種の解析を引き続き行った。過食・肥満モデルKKAyマウスと比較対照にKKマウスの視床下部を用い、調製した糖脂質サンプル中のGM3, GM2, GM1, GD1a等の各ガングリオシドの分子種に関して、Multiple Reaction Monitoringを用いて半定量的解析を試みた。メジャーな分子種に関しては大きな差を見出すことはできなかったが、マイナーな分子種についてはいくつか差が見られた。しかしながら、微量成分であるためデータの信頼性、再現性について現在検討中である。 (2)については、KKAyマウスとKKAy/GM3SKOマウスの視床下部におけるレプチンに対する応答性の検討を行った。レプチンに対する応答性が損なわれているKKAyマウスに対して、KKAy/GM3SKOマウスではその応答性が保たれていることがわかった。また、培養細胞を用いたレプチン受容体およびメラノコルチン受容体MC4Rの活性化を検出する実験系をセットアップし、作製したGM3合成酵素遺伝子ノックアウト細胞やガングリオシド増加条件を通して、現在各受容体機能におけるガングリオシドの役割について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、KKAy/GM3SKOマウスの視床下部弓状核におけるレプチン対する応答性を検討し、レプチン抵抗性がみられるKKAyマウスに対し、KKAy/GM3SKOではその応答性が保たれていることを示した。また、Ay変異の導入によりメラノコルチンシグナルに異常をきたしているKKAyマウスは、視床下部のシグナル異常とともに、毛包メラノサイトにおいてもその異常によって特徴的な黄色の毛色をもつが、KKAy/GM3SKOでは毛色が灰色になることも見出しており、ガングリオシドがメラノコルチンシグナルにおいても重要な役割をもつことが示唆された。さらに、視床下部由来神経細胞株N41においてCRISPR/Cas9システムを用いてGM3およびGM2のノックアウト細胞を作成したことで、受容体シグナルにおけるガングリオシドの機能を検討するためのツールが揃いつつある。本年度計画していた実験の一部は現在進行中あるいは予定変更により行わなかったが、全体的には達成度はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いて個々の受容体シグナルにおけるガングリオシドの機能の検討をおこなう。また、視床下部のガングリオシド分子種について、KKAyとKK、またその他の肥満モデル(ob/obや高脂肪食摂取)における変化について、LC-MSによる解析を進めていく。特定の分子種が特定できれば、その分子種が受容体シグナルにおける影響を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度では、所属研究室に既存の抗体や試薬、また実験に用いるマウスを他プロジェクトと共用できるケースが多かったため、予定より使用額が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、他のモデルマウスの購入、特殊配合餌、未検討の各種抗体、各種リガンド、ELISAキット等を順次購入していき、効率よく進めていく予定である。
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