研究課題
本研究は、新規RasファミリーNKiRasの生理的意義について明らかにすることを目的として行われてきた。昨年度まで本研究計画では、がん化型Ras変異体による細胞がん化におけるNKiRasの機能に焦点を当て、研究を行ってきた。RNA干渉法によるNKiRasのノックダウンはRas(G12V)による細胞形質転換を強く抑制することから、NKiRasが発がんシグナルに必須の役割を担うことが明らかになっていた。そこで、各種RasシグナルにおけるNKiRasの役割の解明を試みた。Ras(G12V)をマウスNIH3T3細胞に強制発現したところ、炎症シグナルに関わるST2/ST2L及びNF-HEV/IL33の発現が強く誘導されることが明らかになった。ST2/ST2Lの発現はMAPキナーゼ経路を介した転写因子STAT3及びElk1の活性化が必要であることが明らかになった。また、NF-HEV/IL33はRasシグナルによるCyclin D1のタンパク質合成に重要な役割を担うことにより、発がんシグナルに貢献することが明らかになった。一方で、NKiRasのノックダウンはこれらの遺伝子発現に影響を及ぼさなかったため、NKiRasは別経路に関与することによって、発がんシグナルを活性化していることが示唆された。本研究期間において、私たちは、NKiRasは、TRB3、DDB1、NONO、SFPQなどのシグナル分子と結合することを明らかにした。特にTRB3は新規のがん抑制遺伝子産物として機能することが明らかとなり、NKiRasのSUMO化を誘導することも見出した。まだ機能解析が十分でないDDB1、NONO、SFPQの役割については今後のさらなる研究により明らかにしていく必要がある。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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