研究課題/領域番号 |
26440063
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
富田 毅 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20302242)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 血清アミロイド / セラストラマイシン / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
2014年に、これまでに明らかにされていなかった、ヒト血清アミロイドA1(hSAA1)およびマウス血清アミロイドA3(mSAA3)の結晶構造が相次いで報告され、SAA研究に新たな展開をもたらしている。mSAA3の構造解析の論文(Derebe et al., Elife. 2014;3:e03206)を参考にし、新たに大腸菌の発現系を用いてmSAA3の精製を行った。Derebeらの論文ではSAA3精製時に界面活性剤としてデシルマルトピラノシドを使用しているのに対し、本研究ではコール酸ナトリウムを用いているという相違があるため、両者の比較を行い、前者の精製法では、mSAA3は溶液中では8量体を形成しており、論文で言及されているような4量体の形成はわずかしか見られなかった。一方、後者の精製法では6量体が観測された。ただしSAA3のアイソフォームであるSAA2研究では、精製後の経時的な6量体から8量体への変換が見られることから、SAA3の場合も同様の事象が観測される可能性も存在する。いずれの場合にも、単量体は観測されなかった。またこれらの試料は同一のCDスペクトル・蛍光スペクトルを示しており、二次構造に相違は無いものと推定された。さらにヒト血清アミロイドA3の構造と機能についての研究を行った。研究の進んでいるmSAA3とは異なり、ヒトSAA3(hSAA3)は偽遺伝子とされ、ほとんど解析がなされていない。そこで、hSAA3の遺伝子発現、タンパク質構造についての研究を行い、hSAA3はhSAA2と融合タンパク質をして発現していることを学術論文上で発表した。また、セラストラマイシン結合タンパク質(mTOC)の機能解析では、セラストラマイシン結合タンパク質(mTOC)がZFC3H1であることを確定し、論文発表を行った。さらに動物細胞で大量に発現させたmTOCを固定化したビーズおよびmTOC抗体ビーズを用いて、培養細胞抽出液からのプルダウンアッセイを行い、mTOCと特異的に結合するタンパク質を見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清アミロイドA3の研究では、基礎的な解析を行った学術論文を発表することができた点が大きな進展である。ヒト血清アミロイドA3に関しては、この論文の内容に関する事項を利用した特許申請も行うことができた。mTOCについても学術論文発表にまでたどり着いたことに意義があると考えている。現時点ではさらにmTOC結合タンパク質をいくつか見出しており、個々の標的タンパク質に関するデータを集めているところである。これらのmTOCとmTOC結合タンパク質の相互作用を解析することにより、mTOCの生理機能を明らかにすることが期待されている。
|
今後の研究の推進方策 |
学会参加時におけるディスカッションや学術論文での類似事例研究から、mTOCの機能解析には、どのアミノ酸がどのような機能を産出しているのかを明確にする必要性が見出された。mTOCは非常に巨大なタンパク質であるため、部分体に分割して解析する方法が有力であると結論付けられた。そこで、約2000アミノ酸からなるmTOCタンパク質を8つの部分に分割して精製タンパク質を調製し、その後、相互作用解析、構造解析、部位特異的アミノ酸置換体作製を行うこととした。
|
次年度使用額が生じた理由 |
免疫沈降実験に使用する抗体を購入するにあたり、条件検討を数回にわたり行っていたために、実際の購入が遅れたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
抗体の購入に使用する予定である。
|