研究課題/領域番号 |
26440065
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
榎本 武美 武蔵野大学, 薬学研究所, 教授 (80107383)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノム安定維持 / 発がん抑制 / 老化 / WRNIP1 / RECQL5 / RAD52 |
研究実績の概要 |
本研究はRecQヘリカーゼ及び関連タンパク質の機能と内因性ゲノム傷害因子の探索を行おうとするもので、RecQヘリカーゼではRECQL5、関連タンパク質ではWRNIP1に焦点をあて解析を行った。 1)RECQL5の機能の解析:これまでに、RECQL5がシスプラチンなどのDNA架橋剤によるDNAの傷害の修復過程で機能することを報告してきたが、今年度は、細胞内でホルムアルデヒドに変換されるメタノールに対するRECQL5欠損株感受性を調べたところ、野生株に比べて若干高い感受性を示すことが判明した。 2)WRNIP1の機能の解析: DT40 細胞の遺伝子破壊株を用いたこれまでの解析から、WRNIP1がDNAポリメラーゼηの上流で機能し、その機能を制御する可能性を示唆する結果が得られ、また、この両者が欠損すると、これまで知られていなかった新規な経路が作動することが示唆された。今年度は、この両者が欠損したときに作動する経路として、DNAポリメラーゼδとPrimPolが関与する経路を想定し、WRNIP1とPrimPolの関係を解析した。その結果、WRNIP1はPrimPolに結合し、WRNIP1を過剰発現するとPrimPolの発現が減少し、WRNIP1の発現をsiRNAで低下させるとPrimPolの発現が増加することが判明した。また、DNAの組換えに関与するRAD52とWRNIP1の機能的関連についても解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RECQL5の機能の解析では、RECQL5遺伝子破壊株がメタノールに若干感受性になることから、RECQL5が細胞内で生じるホルムアルデヒドによる傷害の修復に関与する可能性が示唆された。 しかし、RECQL5の機能の解析では大きな進展はみられなかった。一方、WRNIP1の機能の解析では、WRNIP1とDNAポリメラーゼηが欠損したときにRrimPolが機能する経路を想定し、WRNIP1とPrimPolの機能的関係を解析した。その結果、WRNIP1がPrimPolに結合すること、WRNIP1の発現を低下させるとPrimPolの発現が増加することが判明し、WRNIP1とDNAポリメラーゼηが欠損したときにRrimPolが機能する経路が作動するという仮説を支持する結果が得られた。 以上のように、RECQL5の機能の解析は当初の予定より遅れているが、WRNIP1の機能の解析が進展し、両者を合わせると、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
WRNIP1の機能の解析が進んだことから、今後は、WRNIP1の機能の解析に重点を移し、PrimPolに結合するWRNIP1の領域の決定や、WRNIP1がどのようにしてPrimPolの発現を制御するか、そのメカニズムの解明を行う。また、RAD52と機能的関連の解析では、DNA2本鎖切断を生じるエトポシドに対するRAD52欠損株の感受性がWRNIP1の欠損により抑制されるという結果が得られたことから、DNA2本鎖の修復おけるWRNIP1の機能の解析も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が節約できたため経費の使用が物品費のみとなり、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品の購入に充当する。
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