研究実績の概要 |
本研究で研究代表者は,スクリーニングにより同定した受容体仲介型エンドサイトーシス経路に異常を示す196種類の遺伝子欠損変異体について,表現型に基づいたクラス分けを行い,解析を行っている。H27年度は計画に沿って以下の研究を実施した。 「細胞膜上におけるクラスリン小胞の形成機構」については, 細胞膜から細胞内への取り込みに異常を示したクラスAの変異体の中で,低分子量Gタンパク質Rhoファミリーについての解析を行なった。出芽酵母のRhoファミリータンパク質には、Rho1p~Rho5pおよびCdc42pの6種類が存在するが,この中でRHO3とRHO4遺伝子の二重変異体は致死であり,これらは機能的に相補的に働いていることが示唆されている。本研究においても,Rho3pとRho4pのそれぞれの不活性型変異体(GTP型変異体)では,エンドサイトーシスに著しい遅延がみられた。現在は、Rho3pとRho4pの機能を同時に欠損させた際の影響を調べるために,RHO3遺伝子欠損株のRHO4遺伝子にランダムな変異を導入することで,rho3Δ rho4温度感受性株の作成を行っている。 「クラスリン小胞の初期エンドソームへの輸送の制御機構の解明」については,Srv2/CAPタンパク質の解析を行った。Srv2pはアクチンの重合を制御するタンパク質として知られているが,エンドサイトーシスにおける役割については,不明な点が多い。本年度の研究により,SRV2遺伝子欠損変異体では,アクチンケーブルの形成の阻害や,顕著なエンドサイトーシスの抑制が見られた。また,Srv2がアクチン切断因子であるコフィリンと協調的に働き,エンドサイト-シスにおける細胞膜陥入後のアクチンの脱重合を促進していること, Srv2によるADP/ATP交換の促進がアクチン重合を促進していることを明らかにした。
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