研究課題/領域番号 |
26440068
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
和田 戈虹(孫戈虹) 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (00314427)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | V-ATPase / mTOR |
研究実績の概要 |
リソソームは細胞内の栄養状態(アミノ酸など)を感知する場として重要である。mTORC1複合体は細胞内のアミノ酸濃度を感知して、細胞成長・代謝・タンパク質合成などの様々な細胞機能を制御する重要なシグナル因子であるが、その活性化はリソソーム膜上で起こる。mTORC1複合体は低栄養条件下では不活性型として細胞質に存在するが、細胞内のアミノ酸濃度が上昇すると、リソソーム膜上の活性型Rag複合体(GTP型RagA/B、GDP型RagC/D)と結合することでリソソームへ移行し、活性化される。研究代表者らは、これまで、ATP6ap2が、V-ATPase酵素のアセンブリーに必須であることを明らかにした。ATP6ap2が欠損すると、V-ATPaseの膜内在性ドメインの構成サブユニットが特異的に分解し、mTORC1が不活性化され、オートファジーが誘導されることを見出した。今回V-ATPaseサブユニットATP6ap2の欠損細胞を作製した。ATP6ap2欠損マウスは胎生致死である。一方、イントロン内にloxPを導入した変異アレル、ATP6ap2floxは機能を保っており、ホモ接合でも明らかな表現型を示さない。そこで、ATP6ap2floxマウスの胎性12.5日目の胚より、常法に従って胚性繊維芽細胞 (MEF)の初代培養細胞を調整する。ATP6ap2floxはCre recombinaseによってATP6ap2Δに変換される。Cre recombinaseを発現するadenovirus (AdxCre)をMEFに感染させ、ATP6ap2ΔをホモでもつMEFを作成する。これまでの予備的な解析の結果、AdxCreをM.O.I = 10-50程度で感染させた場合、感染後4日目でATP6ap2タンパク質が検出限界以下となることが分かっている。この細胞を用いてmTORの活性の変化を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定しているV-ATPase欠損細胞の樹立の研究計画に関して、順調に進展し、欠損胎生繊維芽細胞をすでに複数ロットを樹立した。今後、これらの細胞を用いて、mTORの活性を詳細に解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
酸性オルガネラの酸性化を中心的に行う酵素V-ATPaseのみならず、酸性オルガネラの形態形成がmTORシグナル伝達にどのように影響するかを詳細に調べるために、mVam2やRab7欠損細胞を用い、リソソームの形態形成に欠損が生じると、mTORC1の活性化がどのように変化するか、mTORの基質であるS6 kinase (T389), 4EBPのリン酸化状態や、Rag複合体の変動を解析する。さらに、mVam2過剰発現細胞では、リソソームの凝集が観察されるが(未発表データ)、このようなリソソームの形態変化がmTORC1の活性化に対する影響を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗度に合わせ、実験動物の購入が次年度に変更したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
実験動物の購入の予定。
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