スフィンゴ糖脂質は、その機能として高次機能や疾患に深く関与することが知られている。志賀毒素(ベロ毒素)は腸管出血性大腸菌の病原性因子であり、細胞表面のスフィンゴ糖脂質Gb3に結合後細胞内へ逆輸送され、リボソームを不活化することで細胞死をもたらす。本研究目的は、shRNAライブラリーを用いた遺伝子発現低下による志賀毒素耐性スクリーニングを行うことによって、スフィンゴ糖脂質代謝・輸送に影響を及ぼす新規因子の網羅的な同定・解析を行うことである。 昨年度(H27年度)は、1. shRNAライブラリーによるスクリーニングは、新規因子の多くがオフターゲット効果によるものであったこと、2. 代わりの方法としてCRISPRライブラリーを用いて同様のスクリーニングを行ったところ、網羅的な耐性遺伝子の同定に成功したこと、を報告した。 H28年度はこのCRISPRライブラリーによるスクリーニングで単離された遺伝子のうち、複数種に関してそれぞれHeLa細胞のノックアウト細胞を作製し、糖脂質生合成への影響について検討した。スフィンゴ糖脂質の最初のステップであるセリンパルミトイルトランスフェラーゼのスモールサブユニットSPTSSAのノックアウト細胞においてはほぼ完全にスフィンゴ脂質のde novo生合成活性が消失していた。また細胞内輸送やイオン輸送に関与する遺伝子のノックアウト細胞はどれも受容体Gb3の減少が見られたが、糖脂質生合成のパターンはそれぞれのノックアウト細胞に特徴的であり、作用点が異なることが示唆された。
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