研究課題
ユビキチンはタンパク質の機能を制御する必須の修飾分子である。ユビキチンの発現は環境に応じて変動し適切な量に調節されており、ユビキチン量が調節されていること(ユビキチンホメオスタシス)は、生命活動の維持に重要である。Rfu1(Regulator for free chains)は、エンドソームに局在し脱ユビキチン化酵素Doa4を阻害することによって、細胞内の単量体ユビキチンレベルを制御している。ESCRT補助因子でエンドソーム上で働く分子Bro1は、Doa4とRfu1の両方の局在や活性を制御していることが明らかになり、さらにBro1がユビキチン結合タンパク質でもあることが報告されたため、本年度はBro1の解析を進めた。Bro1とRfu1は、Bro1のVドメインとRfu1のYPEL モチーフを介して結合している。Bro1の哺乳類ホモログであるAlixのV ドメインは、YP(X)nLモチーフを持つタンパク質と結合し、V ドメイン中Phe残基を中心とする疎水性の溝が結合箇所であることが報告されている。AlixとBro1 のV ドメインにおいては、Vドメイン全体のアミノ酸の相同性は低いが、このPhe残基とその周辺のアミノ酸が幾つか保存されていた。そこで、Bro1 VドメインのPhe残基に変異を導入したところ、Rfu1との結合が顕著に低下することがわかった。またRfu1のエンドソーム局在も減少することがわかった。
2: おおむね順調に進展している
Bro1 Vドメインの中の保存されているPhe残基が、Rfu1との結合に重要であることがわかり、酵母のBro1も、哺乳類のAlixのVドメインとYP(X)nL モチーフとの結合が似たような結合モードで行われている可能性を示すことができた。
現在、酵母の他のBro1ファミリータンパク質のVドメインの解析も進めており、Phe残基の重要性の普遍性を示す。さらに、Bro1 V ドメインとユビキチンの結合がどのように、Rfu1の結合に影響を与えるかを調べる予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
FEBS Letters
巻: 589 ページ: 576-580
10.1016/j.febslet.2015.01.017
Journal of Biological Chemistry
巻: 289 ページ: 21760-21769
10.1074/jbc.M114.550871
Nature
巻: 510 ページ: 162-166
10.1038/nature13392
http://kimurapqchs.agr.shizuoka.ac.jp/wordpress/