研究課題
ケモカインSDF-1αは血小板α顆粒中に貯蔵され血小板の活性化に伴い放出されると、SDF-1α受容体CXCR4を発現している血管内皮や平滑筋などの前駆細胞が遊走され、血管修復が促されることが知られている。また血小板表面にもCXCR4が発現し、血小板活性化の促進にも働いている。私はSDF-1αによる血小板膜を介する細胞内シグナル伝達機構の解明を目的として、スフィンゴ脂質ミクロドメインである脂質ラフトの関与について解析を行った。(1) SDF-1αはプロテインキナーゼAktの一過性活性化と血小板凝集を惹起した。(2) SDF-1αによるAkt活性化は、CXCR4アンタゴニストAMD3100およびPI3キナーゼ阻害剤Wortmannin, LY294002で抑制された。(3) SDF-1αによるAkt活性化および血小板凝集は、メチルβシクロデキストリン前処理でラフトを破壊すると阻害されたことから、脂質ラフトの関与が示唆された。(4) ショ糖密度勾配遠心法によりCXCR4は血小板の脂質ラフト画分に存在することがわかった。以上のことから、 SDF-1αは脂質ラフトを介してPI3キナーゼ/Akt経路を活性化し血小板凝集を引き起こしている可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画と内容が少しずれているが、血小板の糖脂質ミクロドメインである脂質ラフトにおける新しいシグナル伝達経路を見出した。
脂質ラフトは均一な構造体ではなく、脂質組成と機能の異なるラフトが一つの細胞に存在することが知られている。今回見出した SDF-1αの脂質ラフトを介する血小板凝集が、どのようなラフトを介しているのかを明らかにする。
当初の計画の若干変更を加えて、新しいテーマを加えたため、研究の下地作りに時間を割いてしまった。
研究の下地を完成させて、論文にまとめる。まとめるに当たって必要な試薬、英文校閲、論文投稿に使用する。
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