研究実績の概要 |
血小板α顆粒に貯蔵されているケモカインstromal cell-derived factor-1α(SDF-1α)は、血小板の活性化に伴い放出される。そして血小板表面に発現している7回膜貫通Gタンパク質共役型SDF-1α受容体C-X-C chemokine receptor type 4(CXCR4)に作用し、血小板活性化の促進に働くと考えられている。本研究では、SDF-1αによる血小板膜を介する細胞内シグナル伝達機構の解明を目的として、スフィンゴ脂質ミクロドメインである脂質ラフトの関与について解析した。 1. SDF-1αは濃度に依存してAkt ( Thr308 , Ser473 ) のリン酸化と血小板凝集を惹起した。 2. SDF-1αによるAkt活性化および血小板凝集は、Methyl-beta-cyclodextrin(MβCD)前処理で脂質ラフトを破壊すると阻害されたことから、脂質ラフトの関与が示唆された。 3. ショ糖密度勾配遠心法により、CXCR4(35%)と三量体Gタンパク質Gαi1 (93%) , Gαi2 (91%) , Gβ(50%) およびPI3キナーゼp110β(4.0%) , Akt2(4.5%)が血小板の脂質ラフト画分に存在することが確認された。以上のことから、SDF-1αは脂質ラフトに局在するCXCR4/三量体Gタンパク質を介してPI3キナーゼ/Akt経路を活性化し血小板凝集を引き起こしていることがわかった。
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