研究課題
まず、NMR法による抗菌ペプチドの解析を効率的に進めるために、昨年度に引き続き、安定同位体標識ペプチドの調製法の検討を進めた。組換え抗菌ペプチドの発現の際に問題となる、発現宿主に対する毒性の回避や、発現したペプチドの分解を回避する技術の検討を積極的に進めた。まず、インセクトデフェンシンに分類される線虫由来抗菌ペプチドABF2の大量発現で開発に成功した共発現による不溶性顆粒化促進技術を哺乳類由来αデフェンシンの一種であるマウス由来crp4を対象とした発現系に応用し、効率的な試料調製技術の開発に成功し、国際学術誌に発表した。また、植物由来抗菌ペプチドであるSN1を対象として、不溶性顆粒を安定化させ発現量を増加させることにも成功した。SN1については、複雑なジスルフィド架橋の形成が試料調製上問題となるため、酵母分泌系による発現技術の開発も進め、安定な発現が可能であることを示し、NMR解析により、天然型と同等のジスルフィド結合を形成していることを証明し、その成果を国際学術誌に発表した。また、これらの成果により、調製に成功した試料を活用して、NMR法による相互作用、構造解析を進めた。まずABF2の解析では、遺伝子組換え技術を活用した安定同位体試料を活用して、C末端領域が抗菌活性を発現する際に細菌膜と相互作用する際に重要な残基の同定に成功し、活性発現機構のモデルを提唱した。また、線虫由来抗菌ペプチドCP1を対象とした解析でも、昨年度までの研究成果として得られたペプチド高発現系を活用し、安定同位体標識試料を調製、Tr-NOEを利用したLPSとの相互作用時の立体構造解析に成功した。グラム陰性菌外膜との相互作用に重要と予想されるCP1のC末端側の疎水性領域を同定し、その領域がαヘリックス構造を形成して機能を発揮することを明らかにし、この成果を国際学術誌に発表した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究実施計画に基づき、安定同位体標識抗菌ペプチドを活用したNMR法による相互作用解析、構造解析を展開し、特徴的な成果を得ることに成功しており、研究全体として概ね順調に進展しているといえる。
遺伝子組換え抗菌ペプチドのNMR解析への有用性を証明する成果をあげることに成功していることから、引き続き、試料調製法の改良と応用を進めると共に、立体構造解析、相互作用解析への応用研究をさらに展開する。
計画で予定していた消耗品の購入を一部、次年度以降に予定しているため。
次年度、消耗品の購入を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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