• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

環境刺激に対する大腸菌細胞内情報伝達の定量的解析

研究課題

研究課題/領域番号 26440073
研究機関大阪大学

研究代表者

福岡 創  大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (50447190)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード走化性 / 感覚受容 / 情報伝達 / バイオイメージング
研究実績の概要

本申請研究は,紫レーザー光照射によるケージドセリン開裂を利用し,セリン刺激とべん毛モーターの回転方向転換の時間差から,大腸菌1細胞についてセリン刺激による細胞内シグナルの伝達時間を計測している.平成26年度までの研究で,セリン刺激とべん毛モーターの回転方向転換の時間差からセリン刺激に対する大腸菌の応答時間を高時間分解能で計測し,受容体から距離に応じた(数百ミリ秒の)細胞内シグナルの伝達時間差(細胞内シグナル伝達の方向性)や,この細胞内シグナルの伝達時間差が,細胞内シグナル消去を担うCheZの細胞内局在の位置によって生まれていることを明らかにすることができた.以上のように,細胞外刺激に対する細胞応答を1細胞かつ高時間分解能で計測することで,大腸菌の細胞内では,反応拡散を基本としたシグナル伝達分子CheY-P濃度の減少が,受容体クラスターからの距離に依存した時間差を伴って細胞内を伝搬すること,さらにCheZが細胞極に局在した受容体クラスターでCheY-Pを脱リン酸化することで,時間差を伴ったCheY-P濃度減少の細胞内伝搬を生み出していることが明らかになった.平成27年度は,まず上述の研究結果を学術雑誌へ投稿するための準備を行っており,平成28年度中に投稿を予定している.また平成27年度には,予期せず所属研究室が大阪大学へ移転することとなり,顕微鏡システムなどの計測装置を解体する必要性が生じた.そのため,平成27年度は,研究室の新規セットアップや計測装置の再構築を行い,ケージドセリンの光開裂を利用した細胞応答計測ができるようにするまでの現状復帰を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究実績の概要で記述した通り,平成26年度までの研究で,細胞外刺激に対する細胞応答を1細胞かつ高時間分解能で計測することで,大腸菌の細胞内では,反応拡散を基本としたシグナル伝達分子CheY-P濃度の減少が,受容体クラスターからの距離に依存した時間差を伴って細胞内を伝搬すること,さらにCheY-Pを脱リン酸化するCheZの受容体クラスターへの局在が,時間差を伴ったCheY-P濃度現象の細胞内伝搬を生み出していることを明らかにした.現在,まず上述の研究結果を学術雑誌へ投稿するための準備を行っており,ここまでは概ね順調に進行している.しかし平成27年度は,所属研究室の大阪大学への移転があり,顕微鏡システムなどの計測装置の解体,および細胞応答計測ができるようにするまでに計測装置を現状復帰させる必要があった.そのためH27年度に計画していた紫色レーザー光およびケージド化合物を用いた刺激導入システムと,青色レーザーを用いたGFP蛍光の計測システムを組み合わせた顕微鏡の構築を完了することができなかった.

今後の研究の推進方策

平成28年度は,上述した「紫色レーザー光およびケージド化合物を用いた刺激導入システムと,青色レーザーを用いたGFP蛍光の計測システムを組み合わせた顕微鏡システム」を完成させ,当初の研究計画に従い,以下の実験を進める.1)外部シグナルの入力時間(セリン放出の時間)と GFPを融合したシグナル伝達分子(CheY-GFP) の結合・解離の時間差の計測,2)モーター回転方向転換と CheY-GFP の結合・解離の時間差の計測,3)モーターに結合したCheY-GFP数の定量,および,モーターの回転方向転換に必要なCheYの最低結合数の検証.また,今後の研究の進展に伴い,複数の走化性タンパク質を同時に計測する必要がある.そこで当初の研究計画を発展させるため,走化性刺激に対する複数の走化性タンパク質の挙動を同時に計測可能な顕微鏡システムの構築を検討する.また,回転電場を用いたべん毛モーターの強制回転システムの構築を再開する.

次年度使用額が生じた理由

研究実績の概要および現在までの達成度で記述したように,平成27年度は,平成26年度までの結果を研究成果として論文執筆するために時間を割いたことや,所属研究室の大阪大学への移転があり顕微鏡システムなどの計測装置の解体,および研究室のセットアップや,顕微鏡システムを再び細胞応答計測が可能となるように現状復帰させるまでに時間を要した.以上の理由から,平成28年度使用額に変更が生じた.

次年度使用額の使用計画

平成28年度は,平成27年度に生じた差額と研究計画に計上した平成28年度使用額と合わせて,当初研究計画の通りケージド化合物を用いた刺激導入システムとGFP蛍光の計測システムを組み合わせた顕微鏡システムの開発,および,今後研究を発展させるため,複数の走化性タンパク質を同時に計測可能な顕微鏡システムの構築検討に必要な光学素子,装置の購入,また,研究遂行に必要な試薬類などの購入費として使用する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] The detection of chemoreceptor cluster’s activity in a single E. coli cell by the functional FRET probe2015

    • 著者名/発表者名
      Tomoko Horigome, Hajime Fukuoka, Hiroto Takahashi, Yuichi Inoue, Akihiko Ishijima
    • 学会等名
      第53回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      金沢大学角間キャンパス(石川県金沢市)
    • 年月日
      2015-09-15 – 2015-09-15
  • [学会発表] Relationship between cooperativity in receptor array and intracellular signaling under steady-state of Escherichia coli.2015

    • 著者名/発表者名
      Hajime Fukuoka, Yong-Suk Che, Tomoko Horigome, Yuichi Inoue, Hiroto Takahashi, Akihiko Ishijima
    • 学会等名
      第53回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      金沢大学角間キャンパス(石川県金沢市)
    • 年月日
      2015-09-13 – 2015-09-15
  • [学会発表] Relationship between polar localization of chemotactic proteins and intracellular signaling under steady-state of Escherichia coli2015

    • 著者名/発表者名
      Yong-Suk Che, Hajime Fukuoka, Yuichi Inoue, Hiroto Takahashi, Akihiko Ishijima
    • 学会等名
      第53回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      金沢大学角間キャンパス(石川県金沢市)
    • 年月日
      2015-09-13 – 2015-09-15
  • [学会発表] 走化性受容体クラスターの協同性と複数べん毛モーターの回転同調性の関係2015

    • 著者名/発表者名
      福岡 創, 石島秋彦
    • 学会等名
      第12回 21世紀大腸菌研究会
    • 発表場所
      琵琶湖グランドホテル・京近江(滋賀県大津市)
    • 年月日
      2015-06-05 – 2015-06-05
  • [学会発表] 大腸菌走化性シグナル伝達におけるCheZ 極局在の役割2015

    • 著者名/発表者名
      蔡栄淑、福岡創、石島秋彦
    • 学会等名
      第53回日本生物物理学会年会
    • 発表場所
      琵琶湖グランドホテル・京近江(滋賀県大津市)
    • 年月日
      2015-06-05 – 2015-06-05

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi