研究課題
鞭毛・繊毛には多種類のダイニンがある。それぞれは異なる位置に配置され、また、屈曲運動において固有の機能を担うと考えられている。個々のダイニンのもつ機能を明らかにし、繊毛運動の発生におけるそれぞれの役割を理解するために、本研究では緑藻クラミドモナスの変異株を用いて以下の実験を行った。(1)特定の繊毛微小管にのみ存在するダイニン DHC12 の機能解析: DHC12 の機能を調べるために、このダイニンの欠失株の作成を試みた。クラミドモナスゲノムに外来遺伝子を導入して作成した変異株ライブラリーの中から、ダイニン近傍の遺伝子が破壊された株を一つ得た。今後、この株の遺伝子変異状態を調べ、DHC12 遺伝子の破壊株かどうかを明らかにし、その運動性を調べる予定である。(2)DHC12 の精製: 特異的な抗体を用いて、DHC12 を分取する手法を確立した。10 L のクラミドモナス培養液から調整した繊毛を用いて、 KI を主体とした抽出液によりダイニンを抽出すると、DHC12 が比較的多量に抽出されることがわかった。それを特異的な抗体により免疫沈降することで DHC12 を分取した。今後、スライドガラスに固定した抗体を用いて DHC12 の精製とガラスへの固定を同時に行い、顕微鏡下で微小管とダイニンの相互作用を調べる予定である。(3)マイナーダイニン DHC4 の精製: 繊毛根元にのみ局在するダイニン DHC4 の機能解析を行うために、その精製法を確立した。 DHC4 はATPの非存在下に微小管に強く結合する性質をもつ。ATPの非存在下に微小管と強く結合する他のダイニン(外腕ダイニンと内腕ダイニンf)を欠失した変異株の繊毛を出発材料として、繊毛からの抽出物からダイニンを微小管との結合・解離を利用して精製した。今後、この標品を用いて、そのモーター活性を調べる予定である。
3: やや遅れている
本年度初めに、東京大学から県立広島大学に研究の場を移した。そのため、予定していた、2つの実験、光ピンセットを用いたダイニン微小管相互作用の解析、RNAi 法を用いた 特定ダイニンのノックダウン株の取得とその運動性解析、が実行できていない。異動先では、研究施設の一部が整わなかったためである。
上記のように、異動に伴い一部研究設備が足りないところがある。前任地の研究室で設備を拝借することができるので、今後は、それによりこれまでの遅れを取り戻す予定である。
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