研究課題/領域番号 |
26440075
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
喜多 清 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (70343564)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | in vivoイメージング / 乳がん細胞 / マウス / ゼノグラフトモデル / GFP / がん幹細胞 / がん転移 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、非侵襲下においてマウスの転移がん(癌)細胞を分子レベルで高精度にイメージングし、がん転移メカニズムを解明することである。具体的には、マウス体内においてGFP発現がん細胞により細胞全体をとらえ、量子ドットにより細胞膜タンパク質をラベルし、転移がん細胞全体の動態および特有の細胞膜タンパク質の挙動を非侵襲下においてイメージングすることである。 前年度(1年目)は、「転移能の高い細胞で構成されるがん組織の高効率の作製(がんマウスの作製)」および「マウス耳介内に作製したガン腫瘍のin vivoイメージング」を行い、研究計画に沿って予定通りに遂行することができた。 平成27年度(2年目)以降の計画は、がん組織内の上皮-間葉転移がん細胞(転移能の高いがん細胞)を非侵襲下でin vivoイメージングすることを目標にかかげており、その第一段階として、当年度は、転移がん細胞の同定と長時間のトラッキングのためのマーキングについての検討を行った。上皮-間葉転移がん細胞の同定のためのラベリングとして、核、チューブリンおよびE-カドヘリンタンパクを蛍光ラベリングするようがん細胞のトランスフェクションを行い、現在、3重にラベリングされたがん細胞株樹立を順調に進めている。また、血管に侵入して行く転移がん細胞をトラッキングするために血管のラベリングも必要であることから、当初の計画では血管マーカーの尾静脈投与によるラベリングを計画していたが、より長期間のイメージングにも適用できるよう血管内皮にGFPを発現するトランスジェニックマウス(Tgマウス)を購入し、このTgマウスを免疫不全にするため、現在このTgマウスの免疫細胞(B細胞)に関係する遺伝子を欠損した新しい家系を作製中である。 なお、イメージング装置は初年度と同様にスピンディスクタイプの共焦点顕微鏡とEMCCDカメラを用いて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度はおおむね研究計画通りに「転移がん細胞の同定と長時間のトラッキングのためのマーキング」についての検討を遂行した。さらに、その他に、転移がん細胞をトラッキングする上で重要と考えられる、がん組織内血管のイメージングにおいて、当初の計画でのラベリングよりも、イメージングの際により簡易的で長期間観察が可能となる方法を導入した。この方法は、すでに報告されている血管内皮にGFPを発現するトランスジェニックマウス(Tgマウス)に、ヒトがん細胞を移植しても拒絶反応が起きないよう免疫不全能を有するように遺伝子を改変するものであり、これまでに例のない試みである。Tgマウスに免疫不全能を有する「Tg-免疫不全マウス」を作出するための方法として新遺伝子改変技術であるTALEヌクレアーゼを用いる方法と、Tg-免疫不全マウス作出の確実性を増すために繁殖学的方法として汎用されているバッククロス法(戻し交配法)の二つの方法を同時に遂行している。 さらに、前年度の当報告書において提示した追加課題においても追求している。つまり、非侵襲下でのin vivoイメージングを行う前に非侵襲in vivoイメージングよりも遥かに鮮明なイメージングができ、多くの情報を得ることができる方法として、マウス耳介の一部の上皮を剥離し、そこにガラス(カバーガラス)を張り、いわば「窓」を設ける、auricle-window法を実践している。ガラス直下に腫瘍を形成させることにより、非侵襲ではないものの非侵襲イメージング同様に腫瘍の血流を止めることなくin vivoイメージングできる方法を確立しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題は「転移がん細胞のin vivo蛍光イメージング」である。H27年度に取り組んだ、がん幹細胞同定のためのトランスフェクションを施した細胞株の樹立と、Tg-免疫不全マウスの作出、およびマウス耳介にカバーガラスを張るauricle-window法を確立し、in vivoでの転移がん細胞の同定および長期間トラッキンングの効率を上げ、そのデータをもとに非侵襲in vivoイメージングを行い、転移がん細胞特性を明らかにするものとする。
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