本研究では、潜在的に配列多様性を持つ抗体軽鎖可変ドメイン(VLドメイン)の立体構造構築原理を解明することを目指した。我々グループが開発した単量体型のVLドメインを用いて、種々の速度論・平衡論・構造論的な解析を行い、VLドメインに共通するコア領域を同定した。さらに、一部のVLドメインにおいて、高温で二量体構造が安定化するという一般的な概念に反する現象を発見し、その熱力学的機構を明らかにした。これらの結果は、抗体を含めた様々な有用蛋白質の構造安定性の向上や、抗体軽鎖のアミロイド線維化により起きるALアミロイドーシスの予防・診断・治療に資する有益な情報であり、今後その活用が期待される。
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