研究課題/領域番号 |
26440079
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
恩田 真紀 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60311916)
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研究分担者 |
山崎 正幸 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (80397562)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | neuroserpin / tPA / inhibitor / drug design / serpin / alzheimer / neurodegeneration / dementia |
研究実績の概要 |
本研究は、神経組織における異常凝集蛋白質を分解排除するプラスミンの作用を促進させる方法を開発することを目的とする。本研究の特色は、プラスミン系の中で、ニューロセルピンという脳・神経系の限られた場所で発現する蛋白質を制御のターゲットとした点で、神経組織以外でのプラスミンの作用には影響を与えない画期的なものである。具体的には、ニューロセルピンのtPA(プラスミンを活性化する)に対する阻害機能を抑制する手法を開発する。この目的を達成するために、本年度は以下の実験を実施した。 (1)ニューロセルピン-tPA複合体の構造解析:今年度は複合体の大量調製法の確立に成功した。(i) ニューロセルピンとtPAそれぞれを個別に発現・精製した後に複合体を調製する手法、(ii) ニューロセルピンとtPAを共発現させる手法、(iii) ニューロセルピンとtPAの発現と粗精製までをそれぞれ個別に行い、混合して複合体を形成させてから結晶化実験レベルの純度にまで精製する手法-以上の3手法を試みた結果、手法(iii)で収量・純度ともに著しい向上がみられた。今後は(iii)の手法で得た複合体を用いて結晶化条件の検討を行う予定である。 (2)Latent型ニューロセルピンの構造解析:Latent型ニューロセルピンの精製法はすでに確立済みで、現在高分解能でのX線結晶構造解析に向けて結晶化条件の検討を行っている。 (3)Latent化を速める薬剤の探索: ニューロセルピンと共に、生体内でtPAを阻害するセルピンとして知られるPAI-1にはいくつかの阻害剤が見出されている。それらの内、市販されている薬剤についてニューロセルピンでの効果を検証した結果、Latent化を速めるものを見出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルピンと標的プロテアーゼの複合体の結晶化は極めて難しく、これまで成功例は数例しかない。そのボトムネックとなっているのは高純度の複合体を調製することの難しさにあるが、今年度、我々は複合体の大量調製法の確立に成功しており、結晶構造解析に向けて大きく前進した。また、Latent型ニューロセルピンの構造解析については、今年度は高分解能でのX線結晶構造解析には至っていないが、Latent化を速める化合物を見出すことに成功しており、本研究課題の最終目標の達成に向けて大きな進展を得たと言える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ニューロセルピン-tPA複合体の大量調製に成功したので、同複合体の結晶化実験に加え、複合体を不安定化する薬剤(治療薬のリード化合物)の探索実験も実施する。 (2)今年度見出したLatent化を速める化合物はLatent型を安定化する可能性もあり、これを利用して高分解能でのX線結晶構造解析を目指す。 (3)見出した化合物とNative型ニューロセルピンとの複合体の結晶化も試みる。 (4)PAI-1等、他のセルピンとの比較解析を行う。 (5)上記4つに加え、当初予定していた通り、ハイスループットスクリーニングや代表研究者が開発したリアルタイムPCRによる蛍光測定システムを利用して、より多くのリード化合物を見出し、その効果をモデル神経細胞で検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)当初予定していたLatent型ニューロセルピンの高分解能でのX線結晶構造解析が達成できず、PAI-1等の他のセルピンとの比較解析実験が後回しになった。 (2)リード化合物の探索において、PAI-1に効果がある市販薬に的を絞ることにより、少ない費用でいくつか見出すことに成功した。
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次年度使用額の使用計画 |
後回しになっていた他のセルピンとの比較解析実験、および新たな進展により追加となった複合体を不安定化する薬剤の探索実験の実施に充てる。
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