研究課題/領域番号 |
26440081
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
菊地 浩人 日本医科大学, 医学部, 准教授 (00224907)
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研究分担者 |
古田 忠臣 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10431834)
岡本 研 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60267143)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化還元酵素 / 構造・機能予測 / 分子動力学 / 阻害剤 / 痛風治療薬 / キサンチン / フェブキソスタット / 創薬 |
研究実績の概要 |
キサンチン酸化還元酵素(XOR)はキサンチンを尿酸にする酵素であり、過剰な反応による尿酸の蓄積は痛風の原因となる。XORは細菌からヒトまで存在し、3次元構造は全ての生物種で酷似していて同じ反応機構により尿酸生成を行う。この酵素は体内でプリン化合物を分解する際に働き、キサンチンを水酸化して尿酸に変換する。尿酸が過剰に産生されると痛風を引き起こす。痛風治療薬(強力なXOR阻害剤)であるfebuxostatは、哺乳類酵素は阻害するが、細菌酵素を阻害しないことが、以前当該研究者らによる実験及び理論の研究から明らかにされた。 また、痛風治療薬として認可されてはいないが、別の阻害剤であるBOFが、febuxostat同様に哺乳類酵素は阻害するが、細菌酵素を阻害しないことが、当該研究者による実験から明らかにされた。その機構自身、及びfebuxostatとBOFの阻害作用の機構の違いに関して理解するため、分子動力学を用いた理論計算を試みているが、XORの場合、febuxosutatとは異なる幾つかの動的構造の特徴が見つかり、これらの点に関してより詳しい検討が行われている。哺乳類とバクテリアのXORと阻害剤BOFの相互作用に関して、静的な3次元構造の特徴と動的構造の特徴に関する論文を作成中である。 哺乳類とバクテリアのXORに関する阻害剤の阻害作用機構の解明と共に、他の種のXORの阻害機構も将来的に調べ、阻害作用を体系的に示していくことも今後の予定である。そのために、阻害剤と相互作用をしているニワトリのXORの3次元構造を明らかにする研究にも取り組んでいる。XORの結晶を作成する際に、より精度の高いデータを得るには大量のXORを発現させる必要があるが、これまで大量のニワトリXORを得るのが困難であった。しかし、大腸菌を用いた発現条件の最適化に取り組み、成功するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
阻害剤がXORと結合している状態を初期条件としてMD計算を行い、febuxostatの場合、バクテリアXORのアミノ酸と間の分子間力による結合が切れるまでに要する時間が10ナノ秒以下であり、その時間スケールにおいて哺乳類XORとバクテリアXORの結合力の違いを動力学的に示すことが以前行われた。その手応えから、阻害剤BOFの場合もfebuxostatの場合と同じ程度の計算時間で行えると考えていたが、BOFでは、XORの結合ポケットから抜け出す様子が100ナノ秒程度の時間スケールで見出された。この現象が興味深かったために、100ナノ秒かから1ミリ秒の時間スケールの計算を行わざるを得なくなり、予定よりも日時がかかってしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画より多少時間がかかっているが、研究内容に関して変更はない。 BOFがバクテリアXORの結合ポケットから抜け出す際にXORの入り口付近のペプチドターンが共役的に開くことが複数の計算結果から確認されたが、このペプチドターンを哺乳類のアミノ酸構成に置換した場合に同様に開くかどうか等をMD計算によって検証し、その結果に応じ、実験でもペプチドターンのアミノ酸組成を置換して、そのXORの阻害作用が変化するか否かを確認する。 また、より高い解像度のニワトリXORの3次元構造解析を行うと共に、酵素学的な解析も遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
MD計算に時間がかかるので、より効率的に研究を進めるために、GPGPU計算機をもう1台追加購入することが最も補助金を有効利用することであると考えた。しかし、当該年度の予算だけでは購入することが難しいため、次年度の予算と合算して次年度に購入することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者の一人に、物品費として10万円を予定している。 研究分担者の一人に、実験を行うための消耗品代として約20万円を予定している。 研究代表者の下にGPGPU計算機の購入費として約80万円を予定している。
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