分子シャペロンClpBは、リング状の6量体を形成して働くAAA+タンパク質で、サブユニット1つは、2つのAAA+モジュールと、Nドメイン、ミドルドメインからなる。AAA1、AAA2と呼ばれる2つのAAA+モジュールは、それぞれATPを結合・加水分解し、そのサイクルに応じて構造を変化させる。これらのAAA+モジュールの間に位置するミドルドメインは、ClpBの活性を制御し、また、ClpBとともに働く分子シャペロンDnaKと結合することが見出されている。 私たちはこれまでに、サブユニット間の特異的なジスルフィド結合により、特定の変異を導入したClpBサブユニットを6量体リング内に交互に並びいれる方法を開発しており、平成27年度には、この方法を用いて、隣接するサブユニットのミドルドメイン間で協同的な構造が起こる可能性を見出した。一方で、ミドルドメインの構造変化はDnaKの結合とも強く関連すると予想される。ところが、DnaKとClpBの相互作用は非常に弱く、そのままでは詳細な解析が難しかったため、DnaKとClpBからなる融合タンパク質を作製した。平成28年度は、主にこの融合タンパク質を用いた解析を行った。その結果、DnaKは、凝集基質を強く結合したclosed状態で、ClpBに結合し、その活性を促進することで、脱凝集反応を効率的に進行させることを見出した。また、この仕組みは、無差別なタンパク質のアンフォールドや、ATPの無駄使いといった、ClpBの負の効果を非常に効果的に抑制するものであると考えられた。
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