研究課題/領域番号 |
26440090
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 朗 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (10580152)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ALS / タンパク質凝集体 / 封入体 / RNA / TDP-43 / TDP-25 |
研究実績の概要 |
神経変性疾患ALSの原因タンパク質として知られるTDP43は細胞質封入体を形成する.そこで,このTDP43の細胞質封入体形成過程を解析することで,封入体形成の法則性を見出すことにした.まず,TDP43のカルボキシ末端断片の中で,35 kDaと25 kDaの断片に着目し解析を行ったところ,35 kDaはユビキチン陰性・RNA陽性の細胞質封入体を形成し,25 kDaの断片はユビキチン陽性・RNA陰性の細胞質封入体を形成した.また,25 kDaの断片はRNAとの結合により凝集形成が抑制されているのに対し,35 kDaの断片はRNAによる凝集抑制効果は見られなかった.このように,同じTDP43由来の断片でありながらそれぞれ凝集形成過程と細胞質封入体形成過程が対照的に異なることを見出した.これらの成果はScientific Reports誌に掲載された. 次に,全長TDP43タンパク質の大腸菌組み換え体を高収率で精製し,蛍光相関分光法 (FCS)で解析することでこのTDP43のDNA/RNA結合活性を定量的に測定できるシステムを確立した.また大腸菌組み換え体として得られたTDP43は,哺乳類細胞において発現させたTDP43と同等のDNA結合活性を有していることがわかった. また,封入体に含まれるタンパク質をプロテオーム解析するために,MALDI-TOF-MSの条件検討を行った.結果,BSA,actin,TDP-43をMS解析するための条件を確立できた. さらに,超解像蛍光顕微鏡を用いた封入体の共局在解析を継続して行った.結果,核小体近傍に形成される品質管理に関与すると考えられる区画にミスフォールドタンパク質を局在化させる機構について一端を明らかにできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
細胞内封入体の分類理論を構築するに当たり,神経変性疾患ALSの原因タンパク質として知られているTDP43のカルボキシル末端断片のうち,2種類がそれぞれ異なる細胞質封入体を形成すること,およびそれらの封入体を形成する過程において,片方はRNAの影響を受けず,もう片方はRNAにより凝集形成が抑制されることを見出した.これらの成果は英国Nature Publishing GroupのオープンアクセスジャーナルScientific Reports誌に掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
TDP43の大腸菌組み換え体は,切断後の断片生成とその凝集形成過程を解析する上で重要な材料およびシステムであり,今後,精製TDP43を用いた凝集形成過程について詳細に解析する予定である.また,TDP43のALS関連変異体における分子内構造変化を検出するためFRET解析を行う予定であり,そのための蛍光標識法について検討する. また,MALDI-TOF-MSを用いて,免疫沈降後の共沈降物に対するMS解析について検討を行う.さらに,細胞質封入体の形成場所を定量的かつハイスループットに検出するための画像解析プログラムをMATLAB言語を用いて構築する. 今現在,集中的に解析を行っているALS関連タンパク質のTDP43では,典型的なRNA結合ドメイン意外にRNA結合領域が存在することを私自身示しており,このドメインの同定を行うと共に,RNAによる凝集抑制効果が細胞質封入体形成にどのように関与するかを細胞生物学的手法及び物理化学的手法を用いて明らかにする.これらの結果をまとめることで,細胞質封入体の形成理論を構築する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度の9月~10月にかけて,論文改訂のための実験用消耗品を購入したため,当該年度の予算計画を超過する見込みとなり,前倒し請求を行った.しかしながら,論文改訂のために購入した実験用消耗品は年度内に当該研究で引き続き継続して利用できたため,結果として前倒し請求分を全額消費すること無く今年度へと移行したため.
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通り,今年度使用予定であった実験用消耗品,学会参加旅費,および論文投稿のための英文校正代金等で使用する予定である.
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