研究課題
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンの細胞死による筋力低下を主な症状とする神経変性疾患であり、細胞内で凝集した異常タンパク質が細胞死を引き起こすことが発症の主な要因と考えられている。しかし、その分子メカニズムには不明な点が多い。ALSの原因遺伝子の一つであるSuperoxide Dismutase 1 (SOD1)は、100種類異常のALS関連性遺伝子変異が報告されており、タンパク質が変異により細胞毒性を示すことが明らかにされている。前年度の成果を踏まえて、変異型SOD1の細胞内分解機構について、シャペロン介在性オートファジー(以下CMA)の役割を解析した。CMAの分解をリソソーム阻害剤であるクロロキンで抑制し、代表的なALS変異体であるSOD1G85Rの分解を解析したところ、細胞内でCMAのマーカーであるリソソーム膜タンパク質であるLamp2aと共局在を示した。さらに、CMAに必須な分子シャペロンであるHsc70とSOD1G85Rの相互作用は増加した。これらの結果から、SOD1G85RはCMAで分解されていることが強く示唆された。さらに、野生型とG85Rの立体構造解析の比較から、G85R変異によりβシートが消失することが示された。一方、別の変異型SOD1であるA4VとG93AはCMAによる分解は見られなかった。A4VとG93Aは、G85Rに比べてミスフォールディングの度合いが高く、CMAのきっかけであるHsc70による認識の前に、他の分解系への提示が行われるものと考えられる。以上の結果から、SOD1については非常に多くのALSに関連する変異が報告されているが、G85Rを含むある種の変異によりKFERQ様配列が生じ、細胞内の分解経路が変動することが本研究より強く示唆された。
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Biomaterials
巻: 72 ページ: 29-37
10.1016/j.biomaterials.2015.08.036