研究課題/領域番号 |
26440094
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
成田 啓之 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50452131)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 繊毛 / 多様性 / プロテオーム / ゲノム編集 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
研究代表者は平成27年度に以下の研究成果を得た。 1.研究代表者が以前報告したCPECs繊毛の精製方法を改変し、より精製度を高めたCPECs繊毛を大量に調製して、プロテオーム解析およびクライオ電子線トモグラフィー解析を行った。これにより、精度の高い繊毛プロテオームのデータと、CPEC繊毛軸糸の微細構造に関する新知見を得ることができた。また今回の調製方法を用いて得られたサンプルには当初の予想と異なるタイプの繊毛が混在していることが明らかになった。 2.研究代表者のこれまでの解析に基づき、繊毛に関連すると予想された新規遺伝子にゲノム編集技術を用いて変異を導入し、生殖系列に変異が導入された遺伝子改変マウスを3系統樹立した。これらを近交系へと戻し交配を行う傍ら、ホモ変異体を作出しその表現形を解析したところ、水頭症および精子形成異常を呈することを確認した。また昨年度、この遺伝子産物に対する抗体を作成してその細胞内局在性を検討したが、ホモ変異体の組織を用いた免疫染色実験の結果、昨年度の知見は抗体の非特異的なシグナルに基づくものである可能性が示唆された。 3.本邦の繊毛病である有馬症候群の臨床研究を行っている国立精神神経医療研究センターの伊藤室長との共同計画として、患者から採取された線維芽細胞に対してゲノム編集技術を用いた遺伝子治療を試みた。その結果、この方法を用いた遺伝子変異修復の効率は低く、修復された細胞を効率良く選択する必要があることを確認した。 4.繊毛を介したシグナル伝達の解析を行うために、繊毛局在性カルシウムセンサータンパク質を全身の細胞に発現するトランスジェニックマウスの作出を試みたが、胎生致死となりマウスを得ることが出来なかった。そこで胎生致死の原因と考えられる遺伝子配列を他の配列と置換し、改変型の繊毛局在性カルシウムセンサータンパク質を発現するコンストラクトを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に関する研究成果を2報、査読付学術誌に掲載することができた。更に現在もう1報を投稿中である。 繊毛に関する新規分子の機能解析に関しては、ホモ変異体の表現型解析により、幾つかの組織で繊毛の形成不全・機能不全を確認できた。またその分子の細胞内局在に関しても昨年度に比べて正確な知見が得られた。 繊毛の機能解析に関しては、当初利用を計画していた繊毛局在性カルシウムセンサータンパク質は胎生致死を招くことを確認でき、新たにタンパク質をデザインすることができた。またプロテオーム解析と構造解析を行うことによって、今後研究を展開する上での課題を幾つか明らかにすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
計画書に記載した通り、昨年度までに得た結果を更に発展させるために以下の解析を行う。 1.新規繊毛関連遺伝子の機能解析:注目遺伝子のノックアウトマウスで異常が見られた組織を電子顕微鏡で解析し、病態を把握する。またこの新規分子と協調して働いていると予想される分子との相互作用などを解析する。 2.CPEC繊毛の構造解析:非運動性繊毛の微細構造に関するデータ蓄積を進める。 3.有馬症候群:患者由来細胞を用いて繊毛の構造的異常が生じる分子機構を明らかにする。また遺伝変異修復した細胞を効率良く選択する方法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬を当初の予定より安く購入することが出来たため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に使用する計画である。
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