1.脈絡叢におけるTRPV4の機能解析を行い、脈絡叢の新たな生理機能を提唱することができた。 2.繊毛の構造と機能に関連する新規遺伝子を見出し、KOマウスを作出してその表現形を解析した。顕著な異常が見られた組織を電子顕微鏡で解析したところ、繊毛表面の脂質二重膜、軸糸の配置および数などが乱れており、また繊毛内部に異常な小胞も認めた。これら形態学的な異常に伴い、繊毛運動の振幅は減少した。この新規分子は繊毛の構造分子ではなく、その形成時に機能していると推測された。またヒトにおけるこの新規遺伝子のSNP解析も行い、この遺伝子の変異による繊毛病患者が存在する可能性を見出した。 3.本邦の繊毛病である有馬症候群の病態を解明するため、患者由来の線維芽細胞を用いて電子顕微鏡解析と免疫組織学的解析を行うとともに、ゲノム編集技術やレンチウイルスを用いた遺伝子治療を試みた。電子顕微鏡解析によって正常細胞には見られない特異的な繊毛形成過程の異常を見出すことができた。一方で遺伝子治療の試みはいずれも成功を示す確実なデータは得られなかった。 4. CPECが持つ9+0型繊毛の構造解析を試みた。以前論文に報告した方法を再検討し、より精度の高い試料を調製することができた。そしてこの試料をプロテオーム解析することで、CPECの繊毛機能解明の基盤となる分子も同定することができた。しかしこのサンプルにはなお他の不純物が混在しており、トモグラフィー解析は未だできていない。 5.繊毛局在性カルシウムセンサータンパク質を全身の細胞に発現するマウスの作出を試みた。センサータンパク質を繊毛へ局在させるための配列を何種類か試し、培養細胞系ではいずれも機能することが確認できたが、トランスジェニックマウスを作出するためにマウス受精卵にマイクロインジェクションを行うと胎生致死を引き起こし、目的のマウスは作出できなかった。
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