研究課題/領域番号 |
26440097
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
吉田 英樹 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (30570600)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | mRNAの小胞体標的化 / yki mRNA / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエ培養細胞におけるRNA可視化システムを用いて、がん遺伝子であるyorkie (yki)遺伝子の転写産物の細胞内局在に必要な配列の同定を行った。yki mRNAの3’非翻訳領域(untranslated region: UTR)には、ステム・ループ(stem loop:SL)と呼ばれる二次構造が二つ存在する。そのうちの3’末端側のSL(SL2)に塩基置換変異を導入しSL形成を阻害するとyki mRNAの細胞内局在が失われることから、yki mRNAの細胞内局在化におけるSL2の重要性が明らかとなった。更に、SL2への変異導入により、合成されるykiタンパク質量が野生型yki mRNAを鋳型にしたときより増加するがmRNAの量は変化しなかった。培養細胞においてyki mRNAは、P-bodiesと呼ばれるmRNAの分解や翻訳阻害に関与する細胞内顆粒と共局在することから、SL2はyki mRNAの細胞内局在及び翻訳量の調節にも関与していることが示唆された。更に、SL2の生体内における機能を解析するために遺伝子導入ショウジョウバエを樹立した(yki ΔSL2)。ykiタンパク質の活性は、Hippo経路を介したリン酸化により負に制御される。活性型ykiは細胞増殖を誘導し、一方増殖していない細胞ではリン酸化され不活性化されている。ショウジョウバエの複眼において、野生型ykiを過剰発現しても目立った表現型は確認されないが、リン酸化部位に塩基置換を導入した活性型ykiを過剰発現すると複眼において過形成が起こる。yki ΔSL2を過剰発現させたところ複眼の過形成が観察され、yki mRNAの細胞内局在化の分子メカニズム及び生物学的意義の一端を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度に計画していた「yki mRNAの欠失コンストラクトを用いた細胞内局在の解析」、「細胞内局在とykiタンパク質の合成量及び標的遺伝子の転写量の関係性に関する解析」は終了した。更に平成27年度に予定していた計画のうち「yki mRNAの細胞内局在を制御するシス配列の同定」は終了し、そのシス配列に結合するトランス因子の同定を進めている。また平成28年度に予定していた「yki mRNAの細胞内局在を制御するシス配列の生体内における機能解析」に必要な遺伝子導入ショウジョウバエも樹立し、複眼での機能解析を行っている。以上のように、当初予定していた計画より大幅に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
yki mRNAの細胞内局在に重要なSL2に結合するタンパク質の同定を目指す。平成27年度に予定していた「シス配列に結合するトランス因子複合体のRNAタグを用いた精製及び同定」を予定通り進める。同定したタンパク質に関しては、培養細胞においてRNAi法によりノックダウンした際に、yki mRNAの細胞内局在が影響されるかどうかを確認する。並行して、同定したタンパク質に関して既知のRNA結合ドメインの有無を調べ、上述したRNAi法による局在解析の結果と合わせてyki mRNAへ直接結合するタンパク質を絞り込み、ゲルシフト解析にて直接結合し得るかどうかの解析を行う。yki mRNAへ直接結合するタンパク質同定後、SL2と結合するアミノ酸、逆にRNA結合タンパク質と相互作用するSL2の塩基の同定を、欠失及び塩基置換コンストラクトを用いたゲルシフト解析により行う。更に、同定したタンパク質のショウジョウバエ生体内における機能を明らかにするために、突然変異体系統やRNAi系統、必要に応じて過剰発現系統などの遺伝子導入ショウジョウバエを作製、解析を行い、yki mRNAの細胞内局在の生物学的意義の解明に繋げる。また、平成26年度に解析を行ったyki ΔSL2過剰発現による組織の過形成の分子メカニズムの解明を試みる。
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