研究課題
ショウジョウバエの培養細胞(S2-DRSC)における可視化システムを用いて、がん遺伝子であるyki mRNAの局在を観察したところ、小胞体に隣接し点状のシグナル(foci)が見られた。これらfociの形成には、yki mRNAの3'非翻訳領域(UTR)が必須であることを昨年度までに明らかにしていた。そこで当該年度では、更に重要な配列の絞り込みを行なった。yki 3'UTRの二次構造を調べたところ、2つのステムループ構造(SL1とSL2)が予想された。mRNAの細胞内局在にステムループが重要な役割を果たす例が示されていたため、どちらのステムループが重要かを調べたところ、SL2がfoci形成に必要且つ十分であることが明らかとなった。更に、SL2のステムの構造、ループのピリミジン塩基が重要であることも併せて示した。また、SL2内にmRNAの分解に関わる因子の結合配列を見つけたため、その配列のyki mRNAの安定性における役割を調べた。その結果、その配列依存的にyki mRNAが分解されることを明らかにした。yki mRNAのfoci形成に必要且つ十分な配列を同定したため、その配列に結合するタンパク質の同定を試みた。ストレプトアビジンに結合するRNAタグにyki 3'UTRを連結したRNAを合成した。この合成RNAとストレプトアビジンビーズを用い、S2-DRSCから調整したタンパク質抽出液中からyki 3'UTRに結合するタンパク質を単離、質量分析器により同定した。その結果、Upf1、DDP1、CG6701を含めた13種のタンパク質が同定された。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画していた「yki mRNAのfoci形成に必要十分なシス配列の同定」「シス配列に結合するタンパク質の同定」を終えることが出来た。更に、foci形成に必要として同定した配列及び構造は、mRNAの安定性も制御することを明らかに出来た。以上のように、当初予定した計画以上に進展している。
当初の予定通り、昨年度に得られたyki 3'UTRに結合するであろう因子の解析を進める。RNAi法で培養細胞においてノックダウンし、yki mRNAのfoci形成に対する影響を調べる。また、タグ融合タンパク質、特異的抗体を用い、それぞれのタンパク質の細胞内局在を調べ、P-bodiesや小胞体と共局在するかを調べる。更に、ルシフェラーゼにyki 3'UTRを連結し、同定したタンパク質をノックダウンした際の翻訳への影響を調べる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件)
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