研究課題/領域番号 |
26440098
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
淺川 東彦 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (70399533)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核膜 / 核膜孔複合体 / 核構造 / 分裂酵母 |
研究実績の概要 |
核膜は染色体の転写抑制や核内配向の保持のために足場となる重要な構造であり、足場の実体は核膜タンパク質と染色体タンパク質の相互作用であると考えられている。分裂酵母の核膜孔複合体タンパク質(ヌクレオポリン)のひとつであるNup132の遺伝子破壊株では核膜孔複合体が核膜上でクラスター化することから、Nup132が核構造の形成や維持に関与することが示唆されるが、その分子機構は不明である。本研究では今までにNup132とそのパラログと考えられているNup131が核膜孔複合体の中でそれぞれ核内側および細胞質側に分かれて局在することを明らかにした。この発見を端緒として、当該年度は、30種類のヌクレオポリンの網羅的プロテオミクス解析をおこない、ヌクレオポリン間の相互作用を明らかにした。また、免疫電子顕微鏡によって各ヌクレオポリンの核膜孔における局在を明らかにした。これらの結果、分裂酵母ではNup132を含む複合体が特異な配置をとる可能性が示唆された。また2種類のヌクレオポリンNup98, Nup96の発現調節機構を調べその意義を考察した。核膜孔複合体に対する核内の構造にも注目し、染色体の高次構造の解析をおこなったところ、DNA複製における染色体構造に関わるヒストン修飾を発見したほか、テロメア近傍に見られる新規な染色体凝縮領域knobを発見した。またNup132の機能解析を進めた結果、減数分裂期のキネトコア形成および核膜のバリア機能の維持に重要な役割を果たすことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までにNup132が核内側に特異的に局在化していることが明らかとなったが、そのような現象は他の生物種では報告されていない新規な発見であったために、分裂酵母の核膜孔複合体の全体像を明らかにする必要が生じた。全ヌクレオポリンを網羅的にプロテオミクス解析することによって、全てのヌクレオポリンの相互作用が明らかになったほか、免疫電子顕微鏡解析によって、核膜孔における各ヌクレオポリンの局在が示され、分裂酵母の核膜孔複合体に見られる特異性や保存性について理解が大きく進んだ。また研究実施計画に基づき、生育に必須ではないヌクレオポリンの機能を明らかにするため、減数分裂に注目して機能解析をおこなったところ、Nup132のキネトコア機能や核膜バリア維持機能を明らかにすることができた。また、モデル生物としての分裂酵母の優位性を生かした研究を展開し、Nup98、Nup96に特異的な発現調節の意義を明らかにすることができた。核内構造としてクロマチン高次構造への影響についても解析を進め、減数分裂期DNA複製に関連したクロマチン構造に必要なヒストン修飾や、新規の凝縮染色体領域を発見したが、これらと核膜孔複合体の関係の解明は今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載の研究実施計画に従い、核膜孔複合体と相互作用する因子のスクリーニングを進め、ヌクレオポリンの染色体の機能に対する役割を検討する。核構造形成や維持に特に重要であることが判明した遺伝子については、生化学・遺伝学・蛍光イメージングなど様々な手法を用いて相互の機能的関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要に応じて研究費を執行したために当初の見込額と実際の執行額が異なった。研究計画に変更はなく、当初予定通りの計画を進めている。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金はすべて次年度の物品費に追加する。新たな設備備品は購入しない。旅費、人件費、その他の費用についての変更はなく、交付申請書の通りとする。
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