研究課題
染色体の転写抑制や核内配向の保持のために核膜タンパク質と染色体タンパク質の相互作用が重要であると考えられている。分裂酵母の核膜孔複合体タンパク質(ヌクレオポリン)のひとつであるNup132の遺伝子破壊株では核膜孔複合体(NPC)が核膜上でクラスター化することから、Nup132が核構造の形成や維持に関与することが示唆されるが、その分子機構は不明である。本研究では今までに、Nup132とそのパラログと考えられているNup131を中心に分裂酵母のヌクレオポリンのプロテオミクス解析をおこなうとともに、免疫電子顕微鏡によって核膜孔における局在を明らかにし、分裂酵母が従来モデルと比べて特異的なNPCの構造をもつことを明らかにした。本年度は、様々な部分欠損型のNup132やNup131の発現させ、局在に必要なペプチド領域を同定した。また特定のヌクレオポリンを遺伝的に改変しNPCの構造を変化させると他のヌクレオポリンの局在が変化し、分裂酵母細胞の生育に欠損をもたらすことを明らかにした。また、NPC以外の核内膜タンパク質にも注目し、分裂酵母のLem2, Man1の解析をおこなった。Lem2, Man1は酵母からヒトまでの真核生物で保存されているLEMドメインタンパク質であり、2つの膜貫通ドメインを持っている。免疫電子顕微鏡解析の結果、Lem2とMan1は細胞内ではN末およびC末が核質側に局在するように核膜内膜に局在化していた。遺伝子破壊株の表現型を解析した結果、Lem2が染色体の安定保持やセントロメア領域のヘテロクロマチン化に必要であることがわかった。また、核内構造を生細胞で可視化し解析するための新規蛍光プローブの開発をおこない、ヒストンH4のモノメチル化された20番目のリシン残基(H4K20me1)を生細胞で可視化することに成功した。また、分裂酵母の核構造についての総説を共著で執筆し、NPCと核内構造の関係についての知見を記述した。
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