COP1 ( constitutive photomorphogenic 1 ) は、高等植物から哺乳類に至るまで非常に良く保存されたE3ユビキチンリガーゼである。我々は、COP1の研究から、1)白血病関連MLF1-COP1-p53がん抑制経路の破綻が細胞増殖を促すこと、2)COP1-Trib1複合体によるC/EBPαの分解促進が分化阻害を惹起し白血病発症の原因となること、3)COP1 の既知の標的分解因子群は、機能的に例外無く、発がん関連およびエネルギー代謝経路のどちらかあるいは両方に分類されることを見いだした。本研究では、細胞がん化の過程で、がん細胞が如何にして増殖に必須の特異的エネルギー代謝機構を獲得するのかを、COP1の発がん・エネルギー代謝両経路を繋ぐ研究から明らかにすることを目的とした。 本研究課題により、蛋白質アミノ酸配列検索システム・プロテオーム解析・メタボローム解析等を組み合わせて解析し、COP1の新規複合体・標的分解基質群を同定した。これにより既知・新規関連因子群を俯瞰し、COP1が関与する発がん・エネルギー代謝ネットワーク予想図を作成した。現在、細胞培養系・マウスモデルを用いて解析中である。 さらに、COP1上流に位置する骨髄性白血病関連因子MLF1は、COP1との直接結合によりCOP1-Trib1複合体活性を阻害し、C/EBPαの安定化を促しAML発症を抑制することをマウスモデルを用いて明らかにした。また、MLF1欠損マウス骨髄へのCOP1-Trib1複合体導入は、より未分化段階のAML発症を惹起した。このことは、MLF1欠損によるC/EBPαの早期不安定化を意味する。MLF1活性の誘導・安定化はがん治療での有効性が見込める。
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