研究課題/領域番号 |
26440102
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本庄 雅則 九州大学, 生体防御医学研究所, 研究員 (90372747)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラスマローゲン / 細胞間接着 / セルトリ細胞 |
研究実績の概要 |
プラスマローゲンが著しく減少しているMCF7細胞に対して、プラスマローゲン合成の最も重要なステップであるエーテル結合の形成を担うAlkyldihydroxyacetonephosphate synthase (AGPS)を発現させた細胞(MCF7/AGPS)では、プラスマローゲン量が増加する。MCF7とMCF7/AGPS細胞を比較することによりプラスマローゲンの回復依存的に細胞間接着領域への局在が増加する細胞接着因子を見出した。 プラスマローゲン合成不全マウスのセルトリ細胞では、細胞間接着構造の異常が報告されている。プラスマローゲン合成不全性ラット由来培養セルトリ細胞を2系統樹立し、細胞間接着への影響を検討した。その結果、いずれのプラスマローゲン合成不全性ラット由来培養セルトリ細胞においても細胞間接着因子の発現量が減少することを見出した。 また、本研究過程において、細胞膜の構造と機能維持に重要なコレステロールの生合成がプラスマローゲン依存的に制御されることを見出した。さらに、プラスマローゲンが増加、あるいは欠損した細胞におけるコレステロール生合成中間産物の合成量の解析などから、プラスマローゲンの恒常性は、コレステロール生合成の第2律速酵素である squalene monooxygenase (SQLE)の分解を制御することも明らかにした。これらの知見は、小胞体におけるプラスマローゲンの機能を初めて明らかにした成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、設定していたプラスマローゲン合成不全性セルトリ細胞の樹立に成功し、正常細胞との間で発現量が異なる細胞間接着因子を新たに見出すなど、プラスマローゲン依存的な細胞間接着構造の制御を解明するための基盤を得ることができたため、順調に進展していると判断した。また、プラスマローゲン合成不全性のセルトリ細胞とMCF7細胞では異なる細胞間接着因子の発現や局在性に障害が生じていたことから、プラスマローゲンは異なる作用機序でこれらの細胞の細胞間接着構造の維持に機能するものと推察される結果を得たものの、その分子機構の解明には至っておらず、当初の計画以上に進展しているとは評価できない。
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今後の研究の推進方策 |
プラスマローゲン合成不全性のセルトリ細胞とMCF7細胞で見出したプラスマローゲン欠損を原因とする細胞間接着因子の発現や局在性の障害発症機構を明らかにする。 プラスマローゲンが細胞膜の内葉に偏在することにも着目し、細胞内プラスマローゲン量だけでなく、細胞膜におけるプラスマローゲンの偏在性の障害が細胞間接着因子の発現や局在に与える影響を明らかにする。そのため、プラスマローゲンの偏在性を維持すると推察されるP4-ATPaseの機能障害による影響を検討する。 特定の分子種のプラスマローゲンが細胞間接着因子の発現や局在を制御するのか、特定の長鎖アルコール鎖や脂肪酸分子種をそれぞれsn-1位とsn-2位二有するプラスマローゲン分子種を選択的に回復させ検証する。
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