研究課題
プラスマローゲン(PlsEtn)は極性頭部にエタノールアミン(Etn)を有し、同じく極性頭部にEtnを有するホスファチジルエテノールアミン(PtdEtn)とともに細胞膜の内葉に多く存在することが知られている。このようなPlsEtnの細胞膜における偏在性は、細胞膜におけるPlsEtnの機能発現にも重要であると推察される。今年度はまず、細胞膜の外葉に存在するPlsEtnのアミノ基を膜非透過性化合物で修飾することで細胞膜の外葉に存在するPlsEtnとそれ以外の部位に存在するPlsEtnを検出する系を確立した。ついで、リン脂質の細胞膜の外層から内層への輸送を能動的に担うフリッパーゼ(P4-ATPase)に着目した。そこで、P4-ATPaseの機能発現に必須なCDC50Aの発現を抑制したところ、細胞膜外葉に存在するPlsEtnが増加し、PlsEtnの細胞膜での偏在性が障害された。さらに、PlsEtnの細胞膜での偏在性の障害は、PlsEtnの生合成の律速酵素であるペルオキシソーム局在性酵素Far1の分解を抑制することも見出した。また、このとき細胞内PlsEtnの量は減少していなかった。したがって、P4-ATPaseの機能障害は、細胞膜内葉におけるPlsEtnの一過的な減少をもたらし、その結果、PlsEtnの生合成を促進するため、律速酵素であるFar1の分解が抑制されたものと推察された。すなわち、PlsEtnの生合成は、細胞膜内葉におけるPlsEtnのセンシングと、そのプラスマローゲン量の情報に基づいたペルオキシソーム局在性Far1の分解を調節する高度な時空間的制御機構であること示すとともに、細胞膜の内葉に偏在するPlsEtnは細胞内PlsEtn量の指標として機能することを明らかにした。
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