研究課題
小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送は、ER exit siteと呼ばれるサブドメインで形成されるCOPII小胞が担っている。一方、小胞体はミトコンドリア、ペルオキシソーム、脂肪滴などの非分泌系のオルガネラと近接あるいは接触をもち、それらの形成・機能に寄与する。本研究は、小胞体からペルオキシソームへのタンパク質輸送の解析を行い、さらに小胞体を介したペルオキシソーム形成と脂肪滴形成との連携の可能性を探ることを目的としている。1) Sec16Bの発現抑制によるPex11輸送への影響 : GFP-Pex11を安定発現するHeLa細胞でSec16Bを発現抑制したところ、そのペルオキシソーム局在に影響は見られなかったが、一過性に過剩発現させた場合では、GFP-PEX11のペルオキシソーム局在が減少した。この結果は、Pex11のペルオキシソーム輸送には、小胞体を経由するものと直接取り込まれる経路の2種類が関与し、Pex11量に依存して使用される経路が異なる可能性が考えられた。2) Sec16Bの発現抑制による小胞体構造の変化 : Sec16Bの発現を抑制すると、粗面小胞体が細胞周辺部へと広がり、また滑面小胞体の網目構造は消失して凝集した。同様な小胞体構造の変化を引き起こすsyntaxin18の発現抑制においても、小胞体からペルオキシソームへのPex16-GFPの輸送が阻害されることから、ペルオキシソームへの膜タンパク質の輸送は小胞体構造と密接に関連していると考えられる。3) Sec16BとSec13の相互作用 : Sec16Bは、COPII小胞のコート成分のうち内層のSec23、Sec24と外層のSec13と結合する。Sec16Bの局在はSec13に依存しており、またSec13の発現抑制はSec16Bの発現抑制の場合と同様に小胞体構造に影響を与えた。Sec13結合能を欠失したSec16B(L308D)変異体(Leu-308をAspに変異)はER exit siteに局在せず、またSec16B発現抑制時に見られる粗面小胞体の構造異常をレスキューしなかった。以上の結果から、粗面小胞体の構造維持には、Sec16BとSec13の結合が必要であると考えられる。
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