細胞内物質輸送は、細胞機能を支える主要な機構の一つである。異なった特性を持った複数種の分子モーターは細胞内物質輸送の動力を担うが、その制御機構については未だ未解明な点が多く残されている。本研究課題は、主に魚類・両生類の黒色素胞をモデルシステムとし、特に細胞内物質輸送の方向制御機構の分子的詳細を明らかにすることを目的とする。最終年度では、前年度に引き続き細胞内で分子モーター間の”綱引き”(Tug of War)を人工的に構築し、外来性キネシン1をメラノソーム上に局在化させ、綱引き仮説成立のための諸条件を検証し報告した(Traffic 2016)。また同時に本研究の主要技術の一つであるゲノム編集技術の向上を目指し、TALE蛋白質の新規DNA結合アミノ酸残基の探索を行った。更に、より簡便なTALEN構築法を開発した。 本研究では、メラノソーム輸送における、微小管の修飾状態の素早い時間的制御による方向決定機構の詳細を明らかにした(2014 Mol. Biol. Cell)。また、異なった極性をもつ分子モーターの”綱引き”に着目したin vivoのアプローチを確立し、細胞内物質輸送の方向制御機構の解明に貢献した(Traffic 2016)。今後は、本研究で得られた知見と手法を元に、小胞の細胞骨格乗り換え機構の解明を目指した発展課題に着手する予定である。また本研究で開発した高活性型人工ヌクレアーゼは、ゲノム編集技術への利用のみならず、ゲノム配列可視化プローブの応用が期待できる。
|