研究課題/領域番号 |
26440110
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
黒川 量雄 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 専任研究員 (40333504)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 輸送小胞 / 小胞体 / ライブイメージング |
研究実績の概要 |
小胞体は、連続した膜構造を持つにもかかわらず、形態的にはシート状とチューブ状の膜構造に分かれ、機能的には独立した異なる機能を持つサブコンパートメントに分かれている。申請者は、小胞体上に形成される輸送小胞の出芽領域が小胞体膜の高い曲率領域に依存すること、すなわち、小胞体の膜形態が機能的なサブコンパートメント形成に関与することを明らかにしてきた。本研究では、輸送小胞の出芽領域が小胞体膜の高い曲率領域に形成される分子機構の解明を目指すとともに、その他の機能的なサブコンパートメントの形成への小胞体膜形態の関与を明らかにすることを目的に研究を開始した。 26年度は、超高感度高速のライブイメージング顕微鏡を用いて輸送小胞の出芽領域形成の分子機構の解明を中心に計画を進めた。はじめに、輸送小胞出芽領域のマーカーであるCOPII小胞のコートタンパク質Sec13とCOPII小胞の形成を開始させるSar1の2次元タイムラプス観察をおこなった。その結果、輸送小胞出芽領域では、COPII小胞が繰り返し集積することが判明した。Sar1とSec13の集積の時期を詳細に解析したところ、COPII小胞集積に先んじてSar1が集積することを見出した。また、3次元構造を解析した結果、Sar1はCOPII小胞根元の膜収縮領域に限局して集積することを見出した。さらにこのSar1の集積がSec16の機能に依存することも明らかとなり、現在論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的ではCOPII輸送小胞形成を開始させる低分子量GTPase、Sar1の活性化因子であるSec12の温度感受性株を用いて、制限温度下でSec12の機能を阻害した後に許容温度下に戻してSec12の機能を回復させて、一旦消失した輸送小胞出芽領域がどのように新規形成されるかを解析する予定であったが、COPII輸送小胞が繰り返し輸送小胞出芽領域に形成されることが判明したため、2次元タイムラプス観察での解析を主として行った。そしてSar1がCOPII小胞集積に先んじて輸送小胞出芽領域に集積して輸送小胞出芽領域が形成されることが明らかになった。しかしながら、完全に消失した輸送小胞出芽領域に新たにCOPII小胞が形成される機構も解析する必要があるため、温度感受性株を利用した解析も27年度に行う。一方で、27年度で予定していたSec16温度感受性株を用いたCOPII出芽領域形成の解析は本年度ですでに終了し、Sar1の集積がSec16の機能に依存することを明らかにした。なお、高い膜曲率に依存して局在するレティキュロンタンパク質と板状膜構造に依存して局在するトランスロコンタンパク質、COPII小胞コートタンパク質などを用いた多色観察は27年度におこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画にあげた輸送小胞出芽領域に局在する分子と小胞体膜形態に依存して局在する分子の多色同時2次元3次元ライブイメージングを中心にとして小胞体膜形態に依存した機能領域形成機構を解析を引き続きおこなっていく。また、小胞体の変異タンパク質を留める領域や隔離膜生成領域などの機能的ドメインのライブ観察のためのマーカー作成に取り組む。
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