研究課題
2012年に申請者は、細胞増殖と休止が中心体上の一次線毛動態によって切り替わる全く新しいしくみを、Trichopleinの中心体局在の有無に基づく分子機構とともに示した(Inoko et al.JCB 2012)。最近、Trichoplein類似蛋白質であるAlbatross(Sugimoto, Inoko et al.JCB 2012)の中心体局在もTrichopleinとは全く違う仕組みで細胞増殖のスイッチとなることを示す予備結果を得た。中心体にAlbatrossが局在することで細胞周期進行が保証されており、その局在の有無が細胞周期進行のスイッチとなっている可能性がある。本研究の第一目的は、この中心体Albatrossによる細胞増殖制御機構の分子基盤の詳細な解析である。また、類縁分子群として中心体と上皮細胞間を遷移する「TPHD分子群」も含めた解析補完を進める。その最終目標は、細胞周期スイッチと上皮分化制御を統合する新しいタイプの分子群の分子基盤の解明にある。平成27年度は、Albatrossが関わる細胞周期制御現象について特にその中心小体近位端局在での分子相関をさらに強固にすることができた。(1)中心体Albatrossのノックダウンで正常二倍体細胞の中心小体複製に影響が出ることがわかった。また、生化学実験により、この機能上重要な結合分子も絞り込むことができた。(2)Albatrossノックダウンに伴う細胞周期停止についてはG2/M停止であることが分子マーカーより明らかになったが、この分子基盤には分裂期キナーゼによる微小管ダイナミクスの強い相関が確認できた。(3)これらの表現型はレスキュー実験でも確認できた。以上のことより、少なくともAlbatrossが、細胞周期進行に必要な中心体ダイナミクスを統合するこれまでにない重要な蛋白質であることが明らかになってきた。
2: おおむね順調に進展している
Albatross遺伝子ノックダウンの表現型から推測された、細胞周期進行や中心体複製に必要な分子群との重要な相互作用がin vitroおよびレスキュー実験で確認できた。
Albatross蛋白質の中心体機能解析の基盤となる標的機能蛋白質との相関序列を、in vitroだけでなく、相互ノックダウンおよび断片レスキューによる現象相関、細胞レベルの蛋白質局在変化など、多方面から確認する。現在、中心小体複製および微小管ダイナミクスを統合する重要分子として論文投稿の準備中である。
病態代謝研究会および武田科学振興財団に申請した研究計画で助成金を得たため、そちらの成果報告に向けた実験が発生し、結果的に次年度使用額が生じた。
財団の研究と並行して科研費の課題実験を行い、それぞれのための消耗品等として振り分ける。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
J Cell BIol.
巻: 212 ページ: 409-423
doi: 10.1083/jcb.201507046.
https://researchmap.jp/read0164677/
http://www.pref.aichi.jp/cancer-center/ri/01bumon/08hatsugan_seigyo/