研究課題
脊椎動物の中枢神経系原基(神経板)で進行する脳、脊髄の形成と神経分化を統合的に理解するため、ゼブラフィッシュをモデルとして以下の研究を行った。1) Oct4のゼブラフィッシュ相同遺伝子pou2の脳発生での役割を検討するため、転写抑制型Pou2の加温誘導性遺伝子(hsp-en-pou2) が生殖系列に導入されたトランスジェニック魚の胚において、加温処理により原腸形成終了期でpou2の機能を阻害した。その結果、神経前駆細胞プールで神経分化抑制に働くher3とher5、そして神経前駆細胞誘導遺伝子であるsoxB1(sox2とsox3)の発現が顕著に低下した。この結果は、pou2が、神経前駆細胞プールにおける神経前駆状態をsoxの誘導により維持するが、神経分化自体はher3/5の誘導により抑えることを示唆する。一方、培養系でのreporter assayにより、sox3がher3とher5の転写を活性化するが、この活性化作用はpou2により阻害されること、her3/her5の発現がpou2のプロニューラルクラスターでの発現と入れ子の関係にあることを見いだした。このことは、soxB1が、神経前駆細胞プールにおいて、神経分化をher3/5の活性化により抑制し、プロニューラルクラスターではpou2がherの活性化を抑制することで神経分化を可能とすることを示す。2)原腸形成終了期の尾芽及び伸長中の神経管後端でのpou2の役割を検討するため、hsp-en-pou2の誘導によりPou2の機能阻害を行った結果、多能性維持遺伝子、sox2、そして後期神経分化誘導遺伝子(lhx5とascl1a)の発現が上昇し、sox3およびプロニューラル遺伝子の発現は低下した。一方で、同様の誘導胚で中胚葉細胞の初期分化が促進された。以上の結果は、pou2が神経板、そして神経管後端において、神経分化を制御することを示す。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) 備考 (1件)
Genomics
巻: 108 ページ: 102-107
10.1016/j.ygeno.2016.05.005
http://devbiol.seitai.saitama-u.ac.jp