(1)新規FRETプローブ評価と胚における張力の実測 昨年度のActTS-GRの研究成果は、本年度、論文に公表した。また、本年度は神経化遺伝子SoxD、オーガナイザー遺伝子chordin、さらには神経化抑制因子BMP4を胚に微量注入することによる張力の変化の解析を行った。SoxDにより神経板領域を拡大すると、それに伴い張力の高い領域が拡大した。一方、chordin注入胚ではそのような変化は見られなかった。また、BMP4の注入により張力の減少が観察された。これらの結果は、細胞の運命に依存して細胞張力が変化することを示唆する。②胚内に局在する他のアクチン結合タンパク質に着目し、新たな張力プローブの作成を行った。その結果、アクチニンを用いているActTS-GRよりも胚内の張力変化を明瞭に区別できるプローブを作ることができた。 (2)外胚葉細胞におけるアクチン結合タンパク質の分布とその役割 本年度は、アクチニンに加え、ビンキュリンについても解析を行った。アクチニンをノックダウンするとアクチン・ビンキュリンの細胞内局在が変化すること、ビンキュリンをノックダウンした時にもアクチンの局在が減ることが分かった。また、他のアクチン結合タンパク質において、神経領―表皮領域間で局在が異なるものがあった。これらの結果は、神経―表皮間にかかる細胞張力の違いとアクチン結合タンパク質の相関を示唆する。moesinに関しては、ドメインを欠失させた改変遺伝子を用い、局在の変化を観察した。 (3)神経・表皮外胚葉間における細胞形状の違い 本年度は、外胚葉領域についてPIVを測定することで、両者の動きに実際違いがあることを明らかにした。また、細胞の一辺の長さと張力との相関があるかどうかを解析したところ、弱い相関が認められた。更に、張力測定同様、細胞の運命を変換した際の細胞形状の変化を調べ、相関があることを明らかにした。
|