研究課題/領域番号 |
26440116
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福山 征光 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (20422389)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 線虫 / 神経幹細胞 / hedgehog / 栄養応答 / microRNA / 活性化 / 静止期 |
研究実績の概要 |
TargetscanなどのmicroRNAの標的遺伝子予測アルゴリズムを用いてmiR-235の標的遺伝子候補群をリストアップし、それらの遺伝子群の野生型における摂食と飢餓条件下、あるいは飢餓条件下における野生型と mir-235変異体における発現量比較をRT-QPCR によって調べた。その結果、複数の遺伝子群の発現が、以前我々が見出したmiR-235標的遺伝子であるnhr-91と同様に、野生型において摂食によって亢進し、飢餓条件下におけるmir-235変異体で異常亢進していることを見出した。そのような遺伝子群の中で、進化的にhedgehogと起源を同じくすると考えられているhedgehog関連因子をコードする2遺伝子(grl-5とgrl-7)が表皮から神経前駆細胞へと分泌される組織間シグナル伝達因子の実体であるという可能性を検討した。最初に表皮と神経前駆細胞においてgrl-5あるいはgrl-7を飢餓条件下で過剰発現させると、grl-7が神経前駆細胞の静止期からの活性化を誘導できることを見出した。次に、grl-7プロモーター下流にmCherryを融合させたレポーター遺伝子とgrl-7プロモーター下流にgrl-7の蛋白コード領域とvenus cDNAを融合させたレポーター遺伝子の発現パターンを調べたところ、miR-235の発現が認められる表皮と神経前駆細胞でmCherryの発現が認められ、表皮のアピカル側からvenusが分泌されることを見出した。さらに、grl-7の3’UTRを用いたレポーターアッセイにより、grl-7 mRNAの3’UTR上に存在するmiR-235結合サイトが、miR-235の過剰発現によるレポーター遺伝子の発現抑制に必須であることを見出した。以上の知見はgrl-7が表皮から分泌され神経前駆細胞の活性を促進するmiR-235標的遺伝子である仮説を強く指示する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおりにmiR-235の標的遺伝子群候補の中から、強力な神経前駆細胞活性化誘導因子としてヘッジホッグ関連因子grl-7を同定できた。一方では、以前我々が同定したmiR-235標的遺伝子であるnhr-91の摂食による発現誘導メカニズムの解析は進んでいない。しかしながら、今回grl-7が表皮から分泌されることが示唆されたことから、当初本研究にて平成27年度にその同定を計画していた表皮と神経前駆細胞をつなげる分泌因子の実体である可能性が高い。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
hedgehogの受容体であるpatchedは、hedgehogによって不活性化されることがショウジョウバエなどの動物で明らかとされている。線虫にもpatchedあるいはpatchedに類似したpatched-domain containing protein(PTCHD)をコードする遺伝子がそれぞれ複数存在する。その中から、変異体の表現形解析や発現分布などからgrl-7の受容体候補を探索し、grl-7との遺伝学的あるいは生化学的相互作用を解析する。また、grl-7とnhr-91に摂食による発現誘導メカニズムの解析も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回grl-7が表皮から分泌されることが示唆されたことから、grl-7がmir-235の標的遺伝子であるだけでなく、当初本研究にて平成27年度にその同定を計画していた表皮と神経前駆細胞をつなげる分泌因子の実体であることを検討する実験を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
gtr-7の機能解析の実験に、遺伝子工学試薬400,000円、線虫や酵母培養関連試薬400,000円、チップやチューブなどの使い捨てプラスチック器具400,000円が必要である。
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