ptr-18とヘッジホッグ関連因子grl-7の発現のより詳細な時空間的パターンを、前年度作成したfosmidゆらいのレポーター遺伝子を用いて調べた。PTR-18::GFPは胚発生後期の三つ折期前期より表皮組織の頂端側の細胞膜に局在するが、孵化直前に細胞膜での発現が一気に減少し、細胞質内に粒状に分布した後に孵化後で検出されなくなることを見出した。それに対してGRL-7::mCherryは三つ折期後期より表皮組織の頂端側の細胞外と考えられる領域に分布が認められ、孵化後に細胞質内に粒状に局在、孵化後11時間後には再び頂端側に分布するという発現パターンを見出した。以上より、PTR-18もGRL-7も発生の進行に伴いダイナミックな発現変化を示すことが明らかとなった。 ptr-18変異体は、貧栄養状態下において、神経前駆細胞の静止期を維持することができない表現型を示す。これまでに我々は、grl-7の機能阻害が、この表現型を顕著に抑制することから、ptr-18はgrl-7の上流で機能する可能性を見出していた。そこで、ptr-18がgrl-7の発現パターンに作用する可能性を、上に述べたレポータ遺伝子を用い検討した。ptr-18変異体では、野生型と比較して、孵化前後に認められるGRL-7::mCherryの頂端側から細胞質内の粒状へ発現パターン変化が顕著に遅延することを見出した。これに対し、grl-7と同様に神経前駆細胞の静止期からの活性化に寄与するヘッジホッグ関連因子grd-5やgrd-10のレポータータンパク質には、ptr-18の機能阻害は影響を及ぼさない。よって、ptr-18はGRL-7を含む特定のヘッジホッグ関連因子の局在制御を介してその活性を抑制する可能性が示唆された。
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