研究課題/領域番号 |
26440118
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
信久 幾夫 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (40332879)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | AGM / hamatopoiesis / Sox17 / Notch1 / Hes1 |
研究実績の概要 |
マウスの発生過程で最初に造血幹細胞を認める大動脈-生殖原基-中腎(AGM)領域において、造血幹細胞の発生に関わる血管内皮細胞に隣接する血液細胞塊の細胞に転写因子Sox17を強制発現すると、長期造血再建能を持つ造血幹細胞を含む血液細胞塊をin vitroで多数得ることが出来る。この血液細胞塊の形成及び造血幹細胞を産生・維持する分子機構を明らかにする目的で以下の検討を行った。 ① Sox17強制発現細胞による血液細胞塊の形成および未分化性の保持において重要であること明らかにしたThrombopoietin(TPO)について、まずTPOの受容体c-Mplが血液細胞塊に発現していた。また、TPOが活性化するMAPKの阻害剤U0126およびJAK/STATの阻害剤AG490が濃度依存的にSox17強制発現による血液細胞塊の形成を阻害することを明らかとした。さらに、血管内皮細胞より血液細胞が分化する培養系において、TPOの添加がより多くの血液細胞産生を誘導することを示した。 ② 転写因子Sox17により発現が誘導されるNotch1の細胞内領域(NICD)を、AGM領域の血液細胞塊構成細胞に強制発現すると、未分化性が維持されることを示していた。そこでNICDが発現誘導するHes1を同様に強制発現すると、Hes1強制発現細胞は未分化性が維持されることを明らかにした。この Hes1発現細胞では、血液細胞の発生に必須の転写因子であるRunx1が高発現していた。 ③ Sox17遺伝子座に蛍光蛋白質であるmCherryをSox17と融合タンパク質を発現するように挿入したマウスの胎生10.5日目AGM領域におけるSox17-mCherryの発現を抗体染色により検討を行うと、大動脈血管内皮細胞と共に血液細胞塊において発現を認めた。さらに、その血液細胞塊中の外側の細胞では発現が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に実施を計画していた in vitroの実験については、Sox17-Notch1-Hes1の経路が AGM領域における血液細胞塊の未分化性維持に重要であるという結果を得ることが出来た。移植実験については、研究実施予定であった動物実験センターの大規模改修により実験が出来ない時期があったものの、現在予備実験が終了し、来年度早々に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に得られた結果に基づいて、平成27年度に実施予定の研究内容について以下に挙げる。 ① Sox17強制発現細胞を致死量放射線照射を施したマウスの骨髄内に移植すると長期造血再建能を認めるという準備研究に基づいて、 in vitroで長期間培養した Sox17強制発現細胞においても同様な活性が保持されるのか検討を行う。 ② Sox17-mCherryマウスを用いて、血液細胞塊における Sox17の発現とSox17により発現が亢進される蛋白質の発現について、抗体染色により詳細な解析を行う。 ③ Sox17導入により形成された血液細胞塊において、血管内皮細胞のマーカーである接着分子の発現が上昇していることを明らかとしているので、これらの接着分子のshort hairpin RNAをレトロウイルスを用いて細胞塊に導入することにより、細胞塊から血液細胞が輩出される機構について検討を行う。
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備考 |
上記プレスリリースの内容が、化学工業日報、マイナビニュース、日経産業新聞に掲載された。
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