研究課題
マウスの発生過程で最初に造血幹細胞を認める大動脈-生殖原基-中腎(AGM)領域において、造血幹細胞の発生に関わる血管内皮細胞に隣接する血液細胞塊の細胞に、転写因子 Sox17を強制発現すると、長期造血再建能をもつ造血幹細胞を含む血液細胞塊を in vitroで多数得ることが出来る。この細胞塊の形成及び造血幹細胞を産生・維持する目的で、本年度は以下の研究を行った。① 平成26年度にSox17遺伝子座に蛍光タンパク質であるmCherryをSox17と融合タンパク質を発現する様に挿入したマウスの胎生10.5日目AGMの凍結切片の抗体染色を用いた発現解析を行った。本年度は、ホールマウント免疫染色法を用いた共焦点顕微鏡による観察の系を構築し、胎生10.5日目大動脈において一部の血管内皮細胞および血液細胞塊の血管内皮細胞に近い細胞で Sox17の発現を認めた。② 上記で報告したホールマウント免疫染色法を用いた解析により、 血管内皮細胞のマーカー蛋白質であるVE-cad、 Sox17の下流遺伝子であるNotch1についても、胎生10.5日目の血液細胞塊とりわけ血管内皮細胞に近い細胞での発現を観察した。加えて一部の血液細胞塊の細胞が、VE-CadherinとSox17を共発現することを示した。③ 平成26年度にSox17により発現が誘導されるNotch1の細胞内領域およびさらに下流遺伝子であるHes1について、血液細胞塊の構成細胞に導入すると未分化性が維持されることを明らかとした。さらに、Sox17を導入した細胞について、レトロウイルスを用いた RNA干渉法によりNotch1あるいはHes1の発現をそれぞれ低下させたところ、未分化性の低下が観察された。以上の結果より、血液細胞塊においてはNotchシグナルが未分化性に重要であることが示唆される。
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Cytokine
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.cyto.2017.02.012.
Stem Cells
巻: 34 ページ: 1151-1162
10.1002/stem.2299
http://www.tmd.ac.jp/mri/scr/index.html