研究課題/領域番号 |
26440120
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60467058)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 潜在的な分化多能性 / 精巣性テラトーマ / Dead end |
研究実績の概要 |
マウスの始原生殖細胞(PGC)は精細管内で初期胚様細胞へと転換して分化多能性の精巣性テラトーマを形成することがある。しかしながら、生体内でPGCが分化多能性の細胞へと転換するメカニズムの全体像は未だに不明である。私たちは、最近、RNA結合タンパク質Dead end 1(DND1)の条件付き欠損マウスにおいて精巣性テラトーマが発症することを発見した。本研究においては、DND1の機能を解析することによってPGCの分化多能性を制御する機構を明らかにすることを目的とする。そのためにまず、Dnd1条件付き欠損マウスのPGCをEGFPによって蛍光ラベルした遺伝子改変マウスを作製した。このマウスを用いて、Dnd1条件付き欠損PGCをセルソーターによって回収したのちにRNAを抽出し、次世代シーケンスによって遺伝子の発現量を解析した。 本解析によって、DND1を欠損させたPGCの遺伝子発現の変化を明らかにした。具体的には、正常なPGCと比較してDND1欠損で発現が上昇する遺伝子を約30個、発現が下降する遺伝子を約10個同定した。同定した遺伝子の中には多能性の制御に関与する遺伝子が含まれており、DND1がそのような遺伝子を転写後に制御することによってPGCの分化多能性を抑制する機構が想像できる。一方で、まったく予想外のGOに属する遺伝子群の変化も観察されたことから、DND1の機能は分化多能性の抑制だけでなく多岐に渡る可能性が示唆された。今後は、DND1とこれらの遺伝子のRNAの相互作用を生化学的に解析することによって詳細な機構を明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては精巣性テラトーマ発症の原因を探索する目的で、Dnd1欠損におけるPGCのトランスクリプトーム解析をかがげていた。当初計画で2年目までにデータを取得する予定であり、その通りに進行していることから、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の解析からDnd1欠損におけるPGCのトランスクリプトーム変化が明らかになった。これにより、Dnd1欠損によって発現が上昇または下降した遺伝子の中に精巣性テラトーマ発症の原因となる遺伝子が含まれていると考えられる。28年度においては、これらの遺伝子を強制発現または欠損させることによって精巣性テラトーマを発症する遺伝子改変マウスを作製し、Dnd1欠損による精巣性テラトーマ発症の原因を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度はトランスクリプトームを解析する上でマイクロアレイとと次世代シーケンスを行った。マイクロアレイに関しては当初計画通りに行ったが、次世代シーケンスに関しては共同研究として行ったために当初計画よりも安い価格で行うことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度には数種類の遺伝子改変マウスを作製する予定である。作製するマウスの種類は多いほど研究の目標達成が近づく。そこで、当初計画よりも多い種類の遺伝子改変マウスを作製することで研究に役立てる予定である。
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