研究課題
動物個体内に多様な細胞種が作られる仕組みを理解するため、魚類の色素細胞発生をモデルとして、SOXをはじめ種々の転写因子の細胞運命決定における作用機序を研究してきた。色素細胞は神経堤細胞から色素芽細胞を経由して発生するが、メダカでは黒、虹、黄、白色の4種、ゼブラフィッシュでは白以外の3種類が分化する。本研究では、色素細胞発生への関与が示されていたSox10とSox5が相互作用する可能性を、メダカとゼブラフィッシュを材料として検証した。Sox10は両魚種が共通に持つ3種類の色素細胞の発生に必須であり、Sox5はゼブラフィッシュではSox10の作用をわずかに阻害することが分かった。一方、メダカでSox5は黒色と虹色の発生においてSox10に阻害的であったが、黄色と白色ではSox5とSox10の作用は協調的で、黄色の形成を促進し白色の形成を抑制した。メダカにおいてSox5とSox10は系譜によって異なる作用を示すことが明らかになった。メダカの黄・白色素胞系譜に特有のSoxの機能は、ゼブラフィッシュと異なりメダカでは黄色の前駆細胞からさらに系譜を分岐させて白色を作ることと深く関係していると想像される。色素細胞発生に中心的な役割を果たすSox5とSox10の作用を少し変更することで、メダカは新奇な細胞種(白色)を進化的に獲得するに至ったのではないだろうか。本年度は平成28年度までの結果をまとめ、上記の内容で論文を作成すると同時に、Sox以外の転写因子を欠損する変異体の解析を継続して行った。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
PLoS Genetics
巻: 14(4) ページ: e1007260
10.1371/journal.pgen.1007260
Zoological Letters
巻: 4 ページ: 3
10.1186/s40851-017-0086-3