研究課題
抑制型転写因子であるHes1は、発現振動という新しい制御機構によって、未分化細胞の維持や細胞分化を制御し、組織や器官の形成に重要な働きをしている。しかし、その発現振動を制御する細胞内の分子機構はほとんど明らかになっていない。我々は、Hes1の翻訳後制御に焦点を当て、Hes1と結合するタンパク質因子の網羅的同定ならびにHes1の翻訳後修飾部位の解析を行い、Hes1の機能調節に関わると考えられる新規因子群と、Hes1タンパク質の新規修飾部位を同定してきた。その中から、Hes1タンパク質のユビキチン化状態を制御して安定化する新規脱ユビキチン化酵素(DUB)群を解析し、その機能を報告した。その内容を以下に示す。我々は、Hes1の新規DUBとして、Usp27xを、また、そのホモログであるUsp22, Usp51を同定した。これらの酵素によるHes1タンパク質の制御機構をin vitro, in vivoで調べた結果、これらの新規DUBは、その活性部位に依存してHes1タンパク質と相互作用し、Hes1タンパク質を脱ユビキチン化して安定化すること、Usp22のノックダウンにより、Hes1タンパク質が不安定化し、Hes1オシレーションが遅れ、胎児脳組織内での神経幹細胞の分化が昂進することを明らかにした。一方、Usp27xの過剰発現では、神経幹細胞の分化が抑制された。これらの研究成果は、これらのDUBが、脱ユビキチン化を介してHes1タンパク質のダイナミクスを調節し、神経幹細胞の分化を制御していることを明らかにした。この研究成果は、Hes1の翻訳後修飾がHes1オシレーションとその機能を調節することを初めて示したものである。
2: おおむね順調に進展している
候補因子のノックダウンによるHes1タンパク質安定化のスクリーニングから、Hes1タンパク質の不安定化機構にかかわる因子を同定している。また、Hes1の翻訳後修飾部位の変異体を用いた解析等から、不安定化や転写因子活性に寄与する翻訳後修飾部位を同定し、その詳細を解析している。
これまでの研究内容を継続して行う。同定された候補因子、ならびにHes1修飾部位の変異体による解析を行い、Hes1タンパク質の機能制御に関わる分子機構をin vitro, in vivo, 個体レベルで調べ、Hes1の発現振動を制御する分子基盤を明らかにする。翻訳後修飾や安定性制御によるHes1振動ダイナミクスの変化、幹細胞特異性と分化との関連について調べる。
論文の掲載料として見込んでいた額が、掲載が4月始めになったため、次年度支払いとなった。
論文掲載料、消耗品である細胞培養試薬の購入等に使用する予定です。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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