研究課題/領域番号 |
26440124
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白鳥 秀卓 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90362590)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 左右軸 / 四肢 / 細胞外マトリックス / Pitx2 |
研究実績の概要 |
・Pitx2の非対称な発現が支配する四肢の非対称性の解析 マウス発生中の四肢においてPitx2 が左右非対称に発現していること、エンハンサーがヒトでも保存されていること、左側特異的にPitx2を発現する細胞は四肢の背尾側に偏って存在し、Pitx2自身を介して他の細胞より細胞増殖が抑制されていることをまとめて、雑誌論文と学会で発表した。四肢の組織レベルでの形態の左右非対称性は検出できず、意義は不明であるが、内臓と同様に四肢においてもPitx2 によって制御される左右非対称性が存在することを明らかにした。左右非対称な脳機能によって支配されていると報告されているヒトの利き腕に関して、四肢の左右非対性な形態も関与する可能性を提唱した。
・左右非対称な器官形成を制御する細胞外環境の解明 Pitx2は頭尾軸に沿って左側側板中胚葉の全域で発現するが、細胞外マトリックス因子LR1の変異マウスでは、胚の後方の発現が減弱していた。このことから、LR1が左右軸決定シグナル因子であるNodalの拡散に必要である可能性を考えている。また、LR1変異マウスで左右非対称な形態異常を示す腸管原基において、LR1と相互作用する細胞マトリックス因子のタンパク量が減っていることも明らかにした。LR1の左右非対称な発現は一過性で、器官形成期には左右対称に発現する。LR1変異マウスで観察された左右非対称な形態異常が、LR1の左右非対称な発現が無くなったことによることを証明するために、以下の2種類のマウスを作成した。LR1変異マウスに左側側板中胚葉特異的にLR1を発現するトランスジーンを導入して、形態異常をレスキューするマウス。同定済みの左右非対称な発現に必要な塩基配列に点変異を導入したマウス。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究課題は、心臓流出路の左右非対称な形成機構の解析、四肢の左右非対称性の解析、左右非対称な器官形成を制御する細胞外環境の解析の3項目からなる。 四肢の解析については、雑誌論文や学会への発表をすることができ、おおむね順調に進展した。また、細胞外環境の解析についても、多方面の解析を行ない、27年度以降の解析に必要なマウスの準備も行なって、おおむね順調に進展している。 しかしながら、心臓流出路の解析はあまり進めることができなかったので、「(3)やや遅れている。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
1.心臓流出路の左右非対称な形成機構の解析 すでに入手しているPCP関連分子の変異マウスにおける心臓流出路の形態異常を観察する。一方では、心臓流出路において細胞形態、細胞移動、細胞増殖の特徴を明らかにし、様々なPCP関連分子の局在との関連性を解析していく。 2.四肢の左右非対称性の解析 とくに、四肢の神経の走行や神経支配について、左右の違いや野性型と変異マウスの違いの検出を進めていく。 3.左右非対称な器官形成を制御する細胞外環境の解析 まずは、細胞外環境因子LR1が左右軸形成機構のどの局面で働いているのかを特定する。LR発現領域の細胞形態や細胞移動、LR1と相互作用する細胞外マトリックス因子の免疫染色の解析に加えて、準備しているLR1変異マウスに左側側板中胚葉特異的にLR1を発現するトランスジーンを導入して形態異常をレスキューするマウスや同定済みの左右非対称な発現に必要な塩基配列に点変異を導入したマウスを使って、解析を進める。
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