我々は、ゼブラフィッシュのb-SNAP変異体では、細胞死を誘導するBH3ドメインをもつ蛋白質であるBNip1を介して視細胞変性が引き起こされることを報告した。正常な細胞では、BNip1は小胞体に存在し、syntaxin18(stx18) -SNARE複合体の構成因子として、ゴルジ体から小胞体への逆行輸送を制御する。我々は、b-SNAPの機能欠損によって、stx18 -SNARE複合体の分解が阻害されると、その構成因子であるBNip1のBH3ドメインが活性化され、細胞死の経路が活性化するモデルを提唱した。本研究では、小胞体で活性化されたBNip1がどの様にアポトーシスを誘導するのかを明らかにすることで、上記のモデルを検証した。まず、BNip1の細胞死誘導能が小胞体上で活性化され、細胞死抑制因子であるBcl2と相互作用することを明らかにした。その結果、細胞死誘導因子であるBaxがBcl2から離れ、活性化すると考えられる。次に、ヒートショックプロモーターを用いて時期特異的にb-SNAPを発現させることで、BNip1依存性の細胞死を抑制するのにb-SNAPが必要とされる時期が受精後4日目までであることを明らかにした。細胞死が始まる受精後2日目からこの時期までは視細胞外節の成長が著しく膜輸送が盛んに行われていると考えられる。そこで、モルフォリノを用いて視細胞内の輸送を低減させると、b-SNAP変異体の視細胞の細胞死が抑えられることが確認された。この結果はBNip1依存性の細胞死は過剰な輸送に対して感受性があるというモデルを強く示唆する。
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